補強方針の転換 アジアやアフリカの新市場を開拓へ
欧州のコンペティション出場から遠ざかっている過去6年間、バレンシアCFの移籍市場での動きは明確なパターンに従ってきました。スペイン国内市場、低コストでの獲得やレンタル移籍、そしてヨーロッパの人気リーグ、とりわけラ・リーガにその活動範囲を集中させていたのです。
しかし、今シーズンからその傾向に変化の兆しが見えます。リサンドロ・イセイ率いるスカウト部門の体制下で、クラブは初めてアフリカやアジアといったこれまでにないエキゾチックな市場へ勝負をかける決断を下しました。
遠方の地から発掘した過去の成功例としては、パンデミック後のシーズンまで遡る必要があります。2021年の夏、わずか100万ユーロでBチームの補強として加入したジョージア人GKギオルギ・ママルダシュヴィリです。彼は最終的にホセ・ボルダラス監督を納得させてトップチームのスタメンを勝ち取り、4年後には3000万ユーロでリバプールへと売却されました。
これまでのピーター・リム体制では、スペインサッカーをよく知る、適応済みのアクセスしやすい選手を選ぶことで移籍市場を生き抜いてきました。イングランド、ドイツ、ポルトガル、イタリアのリーグ経験者が多くを占めています。例えば、ドイツのライプツィヒからレンタルされたイライクス・モリバ、イングランドへ移籍する前にバルセロナの下部組織にいたセルジ・カノス、プレミアリーグに適応できず貸し出されたラルジー・ラマザニ(リーズ)やギド・ロドリゲス(ウェストハム)などがその典型です。また、ポルトガルからはイバン・ハイメ、イタリアからはスペイン人のウナイ・ヌニェスやサム・カスティジェホ、さらには元ベティスのイタリア人ピッチーニなどを獲得してきました。
資金力に乏しいバレンシアの補強担当者たちは、この数年間、自らのコンフォートゾーンから抜け出すことを好まなかったと言えます。ヨーロッパの主要リーグから離れた動きとしては、ウクライナ人のロマン・ヤレムチュクをベルギーリーグへレンタルに出したことや、スイスからフィリップ・ウグリニッチとエライ・キュメルトの2選手を連れてきたことくらいでした。
一方で、ラ・リーガの他のクラブは南米や新興市場を積極的に開拓していました。バレンシアが南米市場を開拓したのは、ルフェテとファビアン・アジャラがロドリゴ・デ・パウル(ラシン・デ・アベジャネダ)やヴィニシウス・アラウホ(クルゼイロ)を連れてきた約10年前のことです。それ以降で大西洋の向こう側のリーグから直接やってきたのは、今年の2月にボタフォゴやアトレチコ・ミネイロでプレーした後にフリーで加入した右サイドバックのレンソ・サラビア程度であり、南米市場が長らく軽視されてきたことは明らかです。偉大なアルゼンチン人やブラジル人の名前で彩られたクラブの歴史において、これは一種の異常事態とも言えます。現在、イセイのチームにはアルゼンチン、ブラジル、コロンビアなどのリーグを専門とするアンドレス・サモラが加わっているため、今後この傾向が変わるかどうかは時間が教えてくれるでしょう。
そして今夏、カルロス・コルベラン監督がスペインやヨーロッパのビッグリーグで実績のある選手を求めているものの、そうした選手はコストが著しく跳ね上がるという現実があります。そこでクラブは未開拓だったルートへの扉を開き、エジプトのアル・アハリからマリ人MFアリウ・ディエンを、FC東京から日本人MF佐藤龍之介を獲得する動きを見せています。ディエンは昨夏にレンヌから低コストで獲得したバプティスト・サンタマリアの不振による穴を埋めるフィジカルに優れたセントラルミッドフィルダーであり、佐藤はクラブ史上初の日本人選手としてアジアという強大な商業市場への参入をも意味しています。
(via SPORT)