激化する会長選:ペレスの猛攻とメディア戦略

6月7日に迫る会長選挙に向け、現会長フロレンティーノ・ペレスが対立候補のエンリケ・リケルメに対して猛烈なネガティブキャンペーンを展開しています。ペレスはインタビューでリケルメの背後にラモン・カルデロン元会長の残党がいると指摘し、『日曜の選挙は、あの忌まわしい時代のモデルか、今の素晴らしい時代のモデルかを選ぶものだ』と断言しました。さらに、リケルメの公約に対しても『すべてが嘘だ。代理人たちから、リケルメが選手に「ノーと言わないでくれ」と頼んでいると聞いている。ロドリの契約も完了していない。自分の会社に54%の金利で融資を頼んでいるのに、どうしてレアル・マドリードを救えるのか』と痛烈に批判しています。

ペレスのメディア戦略も凄まじく、リケルメが人気番組『エル・オルミゲーロ』に出演して公約を発表した直後のプライムタイムに、アンテナ3、テレシンコ、クアトロ、ラ・セクスタの各局で、モウリーニョの監督就任を匂わせるCMを計6回も放送しました。アンテナ3では『親愛なるソシオの皆様、このメッセージは皆様の関心事です』、テレシンコでは『他のチャンネルでは話してばかりいますが…』という挑発的なメッセージとともに、モウリーニョが『Sí(はい)』と答える映像が流れました。このCM展開には少なくとも11万8600ユーロ以上が投じられたと推測されています。

また、ペレスはイケル・ヒメネスが司会を務める番組『Horizonte』に出演し、2つの爆弾発表と来季に向けた最初のビッグネームの獲得を発表することを予告しています。さらにソシオに対しては、これまでの獲得選手やタイトルをまとめた特製トレーディングカードアルバムと詳細な書類を送付し、「Mucha historia por hacer(やるべき多くの歴史)」というスローガンでアピール。同時に公証人役場にて、自身が会長である限りクラブと資産は永遠にソシオのものであることを法的に保証しました。なお、ガレス・ベイルもペレスの立候補を支持しています。(via AS, SPORT, Mundo Deportivo, MARCA, Estadio Deportivo)

ペレス陣営のスポーツプロジェクト:モウリーニョ復帰と超大型補強

ペレス陣営の最大の目玉は、ジョゼ・モウリーニョの監督復帰です。陣営はSNSで『MOUcha historia por hacer(やるべき多くのMOU歴史)』とスローガンをもじってモウリーニョの就任を正式に発表しました。モウリーニョ本人はベンフィカに対し、動画はAIによるフェイクだと弁明しましたが、実際にはマドリード側が来週にも契約解除金1500万ユーロ(選挙によって700万ユーロから高騰)をベンフィカに支払う旨を書面で通知しており、3年契約を結ぶ予定です。ペレスは、荒れたロッカールームに秩序と規律を取り戻すために彼のような権威ある人物が必要だと判断しています。

補強面ではすでに超大型の契約が進行中です。ペレス自らが『会長に選ばれれば、コナテが最初の補強となり、レアル・マドリードでプレーする』と明言。イブラヒマ・コナテはリヴァプールとの契約延長を拒否し、フリーで加入する見込みです。なおコナテは今季、同僚ディオゴ・ジョタの交通事故死と父親の死によりうつ病を患ったことを告白していますが、その実力は高く評価されています。もう一人の確定的な補強がインテルから違約金2000万ユーロで加入するデンゼル・ドゥンフリースで、すでにメディカルチェックをパスし4年契約を結ぶ予定です。

さらに、ペレス陣営は中盤の司令塔としてPSGのヴィティーニャ(市場価値1億4000万ユーロ以上、2029年まで契約)の獲得を画策しており、これが『最後の仕上げ』になると見られています。ジョルジュ・メンデスがモウリーニョとヴィティーニャの代理人であり、ペレスとの関係も良好であることが後押ししています。モウリーニョからの要望として、アーセナルのDFリッカルド・カラフィオーリの獲得も進められています。この他、コモで活躍したニコ・パスを1000万ユーロで買い戻す権利の行使(最終判断は新監督へ一任)、ヨシュコ・グヴァルディオル、エンドリッキの復帰、イケル・ムニョスらの名前が挙がっており、チュアメニが退団した場合はウェストハムのマテウス・フェルナンデスを狙うとのことです。なお、ラミン・ヤマルの獲得という噂もインフルエンサーによって拡散されていますが、これは実現不可能な妄想とされています。(via AS, SPORT, Mundo Deportivo, ElDesmarque, MARCA, Estadio Deportivo)

モウリーニョの粛清リストと残留組

監督就任が決定的なモウリーニョは、すでにフロントに対して6人の選手の放出リストを提示しています。リストの筆頭はカンテラーノのラウル・アセンシオで、アルベロア元監督への反抗やロッカールームへの謝罪拒否、夜遊び問題が理由とされています。同じくアルベロアへの反抗に加え、度重なる怪我とパフォーマンスの低さが指摘されるダニ・セバージョスも放出候補です。

バックアッパーのフラン・ガルシアも構想外となり、エドゥアルド・カマヴィンガについては、マドリード加入後の成長の停滞と、大一番での致命的なミスが多いことを理由に放出が要求されています。若手のフランコ・マスタントゥオーノは欧州最高レベルへの適応が不十分とみなされ、レンタルの対象に。最も驚きなのはロドリゴ・ゴエスで、現在は前十字靭帯断裂の重傷を負っていますが、リストに含まれています。

一方で、キリアン・ムバッペ、ヴィニシウス・ジュニオール、ジュード・ベリンガム、フェデ・バルベルデについては、モウリーニョもペレスも完全なアンタッチャブルとしてチームの核に据える方針です。ペレスは『ヴィニシウスはマドリードに留まりたいと思っており、私も彼に留まってほしいと思っている』と明言しました。守備陣ではアントニオ・リュディガーが2027年まで契約を1年延長することが確実で、公式サイトのリストにも掲載されています。同じくDFのフイセンも残留予定です。なお、契約満了となるダニ・カルバハルとダヴィド・アラバの退団は濃厚となっています。(via Mundo Deportivo, AS, ElDesmarque, SPORT)

リケルメ陣営の反撃:ハーランド獲得の「爆弾」と波紋

対立候補のエンリケ・リケルメは、人気番組『エル・オルミゲーロ』に出演し、選挙に勝てばアーリング・ハーランドを獲得するという衝撃の発表を行いました。番組内では背番号9とハーランドの名前が入ったマドリードの新ユニフォームを披露。さらに『ハーランドとロドリを獲得できなければ、来季の全ソシオ10万人の会費を自腹で支払う』と公証人役場で作成した保証書を掲げました。

しかしこの発表の数時間後、ハーランドの父アルフィーと代理人のラファエラ・ピメンタが『すべて面白い話だが、事実ではない。両候補の健闘を祈る』と即座に合意を否定する声明を出しました。マンチェスター・シティも激怒しており、移籍の可能性や違約金条項の存在を完全に否定した上で、選手の肖像権を無断使用したとしてリケルメへの法的措置を検討しています。有名ストリーマーのAuronPlayもこの発表を『リケルメ、何を吸っているんだ。薬漬けだ。家に帰れ』と嘲笑しました。

こうした逆風にもかかわらず、リケルメ陣営とジャーナリストのエドゥ・アギーレは強気の姿勢を崩していません。アギーレによれば、リケルメとハーランド、そして父親の間に完全な合意が存在し、先週土曜日にマルベーリャで会談し、給与と契約年数で口頭合意に達したとのことです。代理人のピメンタは関与していませんが、ハーランド本人はマドリード行きを望んでおり、シティから父親への圧力が凄まじく、パニック発作を起こしている状態だと報じられています。この騒動は、20年前にペレスがルイス・フィーゴを獲得した際の手法と酷似していると話題を呼んでいます。ちなみに、番組内でリケルメは自身の過去についても触れ、パナマで資金難に陥った際、父親からもらった名前入りのロレックス(エアキング)を約220ドルで質に入れ、12日後に仕事が成功して買い戻したという苦労話も披露しました。また、ベルナベウのネーミングライツについてはソシオの国民投票にかけると主張しています。(via MARCA, Mundo Deportivo, SPORT, Estadio Deportivo, Esport3, ElDesmarque)

リケルメ陣営のフロント人事と「大物監督」の影

リケルメ陣営はスポーツ部門の要職にレジェンドを据えることで『クラブのアイデンティティとDNAの回復』を図っています。すでにラウル・ゴンサレスをスポーツディレクターに指名したことに加え、フェルナンド・イエロをカンテラ『ラ・ファブリカ』のディレクターに任命すると発表しました。リケルメは『ラ・ファブリカには才能だけでなく、リーダーシップ、厳格さ、そしてマドリディスモが必要だ』と述べています。

一方で、監督人事についてはまだ謎に包まれています。リケルメはモウリーニョの復帰について『良い監督だが、我々のプロジェクトのスタイルには全く合わない』と一蹴しました。当初は現役で指揮を執っているミケル・アルテタなどを候補としていましたが、ラウルとイエロの助言により方針を変更。リケルメは『マドリードの選手の次に世界最大のスター』『経験のある監督でなければならない。実験はもうたくさんだ』『すべてのマドリディスタが望む人物』と表現し、今週の金曜日か土曜日に正式発表すると予告しました。複数のメディアやジャーナリストのフアンマ・カスターニョは、この条件に合致する「最後の爆弾」は、現在現場を離れているユルゲン・クロップである可能性が高いと予測しています。(via SPORT, Estadio Deportivo, MARCA, ElDesmarque, Esport3)

期待外れに終わったマスタントゥオーノの現状

約1年前に6000万ユーロ以上の巨額の移籍金でレアル・マドリードに加入したアルゼンチンの至宝、フランコ・マスタントゥオーノですが、欧州のサッカーに適応できず苦しい状況にあります。今シーズンは全ての公式戦で24試合(1170分)に出場し、3ゴール1アシストを記録(背番号は30)。監督から多くのチャンスを与えられましたが、期待に応えられませんでした。この不振が影響し、ワールドカップのアルゼンチン代表メンバーからも落選してしまいました(予備登録55名には含まれていますが、声はかかっていません)。

モウリーニョの構想からも外れ、レンタル移籍が既定路線となる中、古巣のリーベル・プレートが彼のレンタル復帰に向けて動いています。リーベル側は、彼がスペインのパスポートを持っているため欧州の他クラブへ貸し出される可能性が高いと見つつも、選手の自信を取り戻すために復帰を打診しています。ただし、マスタントゥオーノの関係者によれば、マドリードからはまだ公式な退団通告やクラブ探しの指示はなく、現在はクラブから与えられた1ヶ月の休暇を過ごしており、マドリードでポジション争いをする意思を持っているとのことです。(via SPORT, ElDesmarque)

2026/2027シーズン新ユニフォームと公式グッズ発表

来シーズンに向けた新しいユニフォームと関連アパレルコレクションが公式発表されました。キャンペーンスローガンは『Nuestra identidad es la elegancia(我々のアイデンティティはエレガンス)』。ファーストユニフォームは伝統の白を基調としながら、襟と袖口にダークグリーンを配し、肩のアディダスの3本線にはピンクが採用されるという、これまでにない斬新な3色使いとなっています。シャツの地にはクラブエンブレムの王冠の宝石をモチーフにしたグラフィックが施されており、『卓越性、職人技、勝利へのメンタリティ』を表現しています。公式プロモーションビデオには、ベリンガム、チュアメニ、ブラヒム、ヴィニシウス、ムバッペ、リュディガー、フイセン、そして女子チームのアテネア・デル・カスティージョとマエル・ラクラールが登場しています。

ゴールキーパー用ユニフォーム(ティボー・クルトワ着用モデル)は黒がベースで、へその位置まで大胆な柄が施されています。価格は大人用が100ユーロ、子供用が75ユーロ、パンツが45ユーロ、子供用全身セットが110ユーロです。試合前のウォームアップや移動時に着用するスタジアムコレクションやトレーニングウェアも発表され、ダークグリーンとピンク、ベージュ、白などを基調としたデザインが揃っています。価格はTシャツが90ユーロ、パンツが100ユーロ、ジャケットが120ユーロ、トラックスーツが130ユーロ、ノースリーブシャツが80ユーロ、通常練習着が55ユーロ、キャップが20ユーロ、マフラーが25ユーロ、ウォーターボトルが30ユーロなどに設定されています。(via SPORT, ElDesmarque)

選挙管理委員会の対応とレアル・マドリードTVの偏向報道

リケルメ候補が郵便投票のシステムと透明性に強い疑念を示したことを受け、レアル・マドリードの選挙管理委員会は異例の追加声明を発表しました。6月4日の13時45分から実施される郵便投票の回収作業において、両陣営から監査人を1名ずつ同行させることを決定。公証人(クルス・ゴンサロ・ロペス=ミュラー・ゴメス氏)の立ち会いのもと、郵便局での回収からバルデベバスの保管室への移送、封印作業までを厳格に管理します。保管室はクラブのセキュリティ部門と監視カメラによって24時間監視され、各陣営の監査人が保管室前で継続的に監視することも許可されました。

一方、クラブの公式メディアであるレアル・マドリードTV(RMTV)の偏向報道が問題視されています。RMTVは両候補の立候補が正式に受理されたことを報じて以降、リケルメの活動や公約については一切無視を決め込んでいます。その一方で、ペレス会長の動静(ハンガリーでのCL決勝への招待や、女子チームの試合でのファンとの交流など)は、大々的に、かつ非常に好意的なトーンで報じ続けています。これに対しリケルメは『視聴率が0.1〜0.2%しかないチャンネルに年間4500万ユーロもの予算を溶かしている。もっと収益性の高いコンテンツを作れるはずだ』と痛烈に批判。自身の構想である「ソシオの街」の建設費も、このTV局の予算数年分で賄えると主張しています。実際、RMTVはTDT(地上デジタル放送)の26チャンネル中で最も視聴率が低く(5月は0.5%)、皮肉なことに最も人気があるのはスポーツ番組ではなく、穴埋めで放送されている西部劇の映画となっています。(via SPORT)

ピッチ外の諸問題:ベルナベウの騒音問題とラグラリの暗躍

サンティアゴ・ベルナベウでのコンサート開催を巡る騒音問題について、ペレス会長は『自治体(イサベル・ディアス・アジュソ州首相やマルティネス=アルメイダ市長)が特別なルールを準備してくれている』と語り、解決が近いと楽観的な姿勢を示していました。しかし、マドリード州政府の報道官は『特定の場所のための法律(アドホックな規制)は作らない』と冷ややかに回答し、ペレスの期待を牽制しました。裁判所が騒音に関するクラブの責任を免除する判断を下したものの、近隣住民の反対は根強く、コンサート再開のハードルは依然として高いままです。ちなみに、元レアル・マドリード選手でフベニルAの監督を務めたアルバロ・アルベロアは、自らをバイエル・レバークーゼンの新監督として売り込みましたが、トップレベルでの経験不足を理由にドイツのクラブから拒否されたとのことです。

また、ペレス会長の右腕であり「名付け子」とも称される金融家アナス・ラグラリ(Key Capital)の暗躍がスクープされました。ラグラリは2022年に、宿敵FCバルセロナがSixth Street社へテレビ放映権の25%を売却した取引(いわゆる「パランカ」)を仲介し、1050万ユーロ(税抜)以上の巨額の手数料を受け取っていたことが判明。この資金注入によってバルセロナは破産を免れ、レヴァンドフスキやクンデらを獲得してリーグ優勝を果たしており、レアル・マドリードの最側近がライバルクラブを救済していたという事実は大きな波紋を呼んでいます。(via SPORT, MARCA)

【本日の総括】

会長選挙が目前に迫り、フロレンティーノ・ペレスとエンリケ・リケルメによる場外乱闘が激化。ペレスがモウリーニョの監督就任やコナテらの補強で固める一方、リケルメはハーランド獲得の爆弾を発表し、クロップ招聘を匂わせるなど、メディアを巻き込んだ泥沼の様相を呈しています。新ユニフォームの発表やマスタントゥオーノの去就などチームの動向からも目が離せません。