クラブ買収問題
セルヒオ・ラモスと投資グループ(Five Eleven CapitalおよびメキシコのGrupo DMI)によるセビージャFC買収交渉が事実上の決裂を迎え、両者の間で激しい非難の応酬となっている。
発端は1月26日に結ばれた株式の最大85%を取得するという拘束力のある意向表明書(LOI)だったが、5月27日にラモス側が提示した新たな条件を巡って対立が表面化した。売り手である5大株主(カストロ、アレス、カリオン、ギハロ、デル・ニド・ベナベンテの各ファミリー)は、ラモス側が事前の株式取得よりも先に1億2000万ユーロの増資を行って過半数の支配権を握る計画に変更したと指摘。これにより既存株主が少数派に転落し、即時の流動性が失われること、さらにGrupo DMIの関与によりラモン・サンチェス・ピスフアンやシウダード・デポルティーバなどの不動産資産の売却リスクが生じると懸念し、この新提案を「からかい」と一蹴した。
これに対し、セルヒオ・ラモスは記者会見を開き、自らの正当性を主張した。セビージャが技術的破産状態にあることを認めた上で、提案の変更はLaLigaとアドバイザーから、クラブの存続のために8000万ユーロではなく1億2000万ユーロの増資を行うべきだと推奨されたためだと説明した。
ラモスは『最初のオファーと2回目のオファーの違いはたった500万ユーロだ。1株あたりの価格(3,175ユーロ)は変わっておらず、支払いが2段階になるだけだ。私たちは盗んだり騙したりしているわけではない。クラブの状況を回復するために私たちと同じように株主にも努力してほしい』と訴えた。
さらに、最終的な株式売買契約(SPA)には署名していないため、株主側が求める約50万ユーロの違約金や損害賠償の支払い義務はないとし、『私たちはLOIの条件を一切破っていないため、良心は清く、何も恐れることはない』と強調した。スタジアム売却の噂についても『優先事項ではなく、将来の売却を検討するのに1秒も無駄にしていない』と全面否定した。
スポーツ部門については、モンチ復帰の噂を『彼は現在別のプロジェクトを手がけている』と否定しつつ、『私たちがクラブを立て直すのに役立つ非常に興味深いスポーツプロジェクトを持っており、すでにトップレベルの専門家たちと連絡を取っている。クラブが前進するために何が必要かは分かっている』と自信をのぞかせた。
また、元会長のホセ・マリア・デル・ニド・ベナベンテ氏が他の株主と共同で声明を出したことに対して『これが、デル・ニドが多くの争いを経て8年ぶりに他の株主たちと結束するきっかけになったのなら、少なくともそのことについては嬉しく思う』と皮肉を交えて語った。
交渉の期限とされた独占期間は終了したが、ラモスは『また電話をもらえれば嬉しいし、希望を持ち続けている。もし他のソシオが私たちのものより良いオファーを出したら、セビジスタとしてみんなで喜ぶだろう』と述べ、対話の窓口を開き続けている。(via SPORT, Estadio Deportivo, ElDesmarque)
LaLigaの反応
セルヒオ・ラモスの「LaLigaから1億2000万ユーロの増資を推奨されたためオファーを変更した」という主張に対し、LaLigaはこれを完全に虚偽であると真っ向から否定した。
LaLigaの関係者によると、接触があったのは3月上旬の1回のみで、ラモスのパートナーであるFive Eleven CapitalのCEO、マルティン・インクがセビージャ側の事前の承認を得て、8000万ユーロの増資がファイナンシャル・フェアプレーに与える影響について質問してきただけだという。LaLigaは『私たちは誰にも特定の行動を推奨することは絶対にない。1億2000万ユーロという数字は、フェアプレーでペナルティの対象となる過去の損失額に基づいているだけだ。3月の会議以来、彼らからは何の音沙汰もなく、接触はゼロだ』と明言。
ラモス側がクラブの財務状況をすでに把握し、5月中旬には口頭での合意に達していたにもかかわらず、その2ヶ月以上前の会議を理由に期限直前で条件を変更したことへの矛盾が浮き彫りとなっている。(via Mundo Deportivo, Estadio Deportivo, ElDesmarque, MARCA)
株主の次なる動き
ラモス側の買収提案を拒絶したセビージャの主要株主たちは、クラブの財政健全化に向けた次なるステップに踏み出している。
株主たちは公式声明を発表し、ラモスとの独占交渉期間によって保留されていた、ラッピやフェデ・キンテロらが関与する「堅実で保証のある他の投資グループ」との交渉を6月1日から再開したことを認めた。
さらに、今後のクラブ買収交渉においては、買い手に対して株式取得直後にクラブの回復を加速させるための「増資の実行」を必須条件として義務付けることを明確にした。これは買い手の選択ではなく、売り手からの絶対的な要求となる。
また、一部のサポーター団体からは、1997年と同様に優先引受権を除外し、末端のセビジスタが株主構成を拡大してクラブを救済する増資案も出ているが、必要な資金額を考慮すると現実的には困難と見られている。
株主たちは現在のクラブの惨状について『過去数シーズンの出来事について自己批判し、現在の状況を招いたことに対して極めて敏感であり、論理的な不安を共有している』とサポーターに向けて謝罪の意を示しつつ、『短期的には難しい決断も下すことになるが、中長期的に持続可能な状況を固めるためのロードマップを維持する』と宣言している。(via SPORT, Estadio Deportivo, ElDesmarque)
来季のスポーツ体制
クラブの所有権を巡る混乱が続く中、来シーズンのスポーツ面の計画も動き出している。
セルヒオ・ラモスの買収計画が破綻したことで、彼が新監督の候補として考えていたホセ・ボルダラスの招聘は消滅した。これにより、トップチームの残留を成し遂げて契約が自動延長されていたルイス・ガルシア・プラサ監督が、引き続きセビージャのベンチで指揮を執ることが確実となっている。
新たなオーナーが決まるまでの移行期間においては、ホセ・イグナシオ・ナバロが暫定スポーツディレクターとして実務を担当し、ガルシア・プラサ監督とともにゴールキーパーの補強など、緊急性の高いポジションから来季のスカッド編成を加速させている。(via ElDesmarque, Estadio Deportivo)
タンギ・ニアンズの去就
深刻な財政難とサラリーキャップの圧迫に苦しむセビージャにとって、タンギ・ニアンズの存在が大きな障害となっている。
2022年の夏にモンチ前SDの主導でバイエルン・ミュンヘンから1600万ユーロで加入したニアンズは、現在クラブの給与総額8900万ユーロのうち、ジョアン・ジョルダンと合わせて2000万ユーロという巨額のコストを占めている。
欧州カップ戦の出場権を逃した現在のセビージャにとって、彼の高額な給与は維持不可能なレベルに達している。さらに、ニアンズはルイス・ガルシア・プラサ監督の構想から完全に外れており、デビュー戦となったオビエド戦で退場処分を受けて以降、一度も出番を与えられていない。
昨夏に他の選手たちが応じた給与削減の要請を拒否した経緯もあり、契約を残り1年残す中で他クラブへの売却は極めて困難な状況である。そのためクラブは、夏の移籍市場での選手登録枠を確保するため、ニアンズ側と契約解除に向けた交渉を急いでいるが、選手側の合意が必要となるため難航が予想されている。(via Estadio Deportivo)
オソの契約と移籍の噂
若手有望株のホアキン・マルティネス・ガウナ(通称オソ)に対し、フランスのストラスブールが強い関心を寄せている。
チェルシーのオーナーでもあるブルー・コ・グループが所有するストラスブールは、攻撃的な左ウイングバックを探しており、スポーツディレクターのデビッド・ウィアーの求めるプロファイルにオソが完全に合致している。ビジャレアルやエスパニョールも彼の動向を注視している。
オソとセビージャの現在の契約は残り1年(2027年6月まで)となっている。クラブの経営陣は買収騒動で不透明な状況にあるものの、オソを重要な資産と位置づけており、先週には彼の代理人(AS1)に対して2030年までの契約延長オファーを提示した。このオファーには、現在のトップチームでの地位に見合った昇給が含まれている。
ただし、クラブはキャピタルゲインを生み出せる選手に対するオファーには耳を傾ける方針であり、今後ストラスブールから正式なオファーが届いた場合の対応が注目されている。なお、ストラスブールはオソに似た特徴を持つウニオン・サンタフェの22歳、マテオ・デル・ブランコも代替候補としてリストアップしている。(via Estadio Deportivo)
【本日の総括】
セルヒオ・ラモスと投資グループによるクラブ買収交渉が破談となり、株主との間で法的措置やLaLigaを巻き込んだ激しい非難の応酬へと発展しています。クラブの経営権が大きく揺らぐ中、ガルシア・プラサ監督の続投が濃厚となり、暫定SDによる来季の編成や財政難を解消するための高給選手放出、若手の契約延長など、ピッチ外での深刻な課題が山積している1日となりました。