ロッカールームの完全崩壊と権力闘争

現在のレアル・マドリードのロッカールームは、スポーツ心理学の専門家からも制御不能な空間と断じられるほど崩壊している。その引き金となったのが、キリアン・エムバペの加入とバロンドール騒動だった。バロンドールでヴィニシウスが受賞を逃すと知るや否や、クラブはアンチェロッティが最優秀監督賞を受賞する予定だったにもかかわらず、式典のボイコットを強行した。これが選手たちに、自分たちが監督よりも偉く、クラブの決定すら左右できるという過剰な特権意識を植え付けてしまった。

エムバペとヴィニシウスによる主役の座を巡る争いは、監督交代のたびにシーソーゲームの様相を呈した。シャビ・アロンソ体制ではエムバペに絶対的な権限が与えられ、エムバペが29ゴールを量産する一方で、ヴィニシウスはわずか6ゴールと冷遇された。前半戦のクラシコでは、70分に交代を命じられたヴィニシウスが怒りを露わにし、アロンソとの握手を拒否してピッチを去るという事態に発展した。これが結果的にアロンソ解任の決定打となった。後を継いだアルベロアは逆にヴィニシウスの自尊心を回復させることに努め、彼を中心に据えた。その結果、アルベロアの下ではヴィニシウスが16ゴールを記録し今季合計22ゴールに到達した一方、エムバペの得点ペースは鈍り、今季合計41ゴールにとどまった。不満を募らせたエムバペは、レアル・オビエド戦を前にアルベロアから第4のフォワード扱いされたと公然と批判した。これに対しアルベロアは『フォワードは4人もいないし、そんなことは一言も言っていない。彼は聞き間違えたのだろう』と反論し、両者の関係修復は不可能な状況に陥っている。

さらに、フェデ・バルベルデとオーレリアン・チュアメニの間で激しい口論が二日連続で発生し、二日目には殴り合いの喧嘩に発展した。この際、バルベルデがロッカールームのテーブルに頭を打ち付けて頭部外傷を負い、病院へ運ばれ縫合処置を受けるという大事件が起きた。クラブは両者に50万ユーロの罰金を科したが、ペレス会長は『26年間で殴り合いがなかったシーズンなど一度もない』と事態を矮小化しようとした。この流血騒動について、バルセロナのガビは『トレーニングでチームメイトと競い合って少し揉めるのは普通のことだし、ある程度までは良いことだ。でも殴り合いになったのなら、監督は彼をプレーさせるべきではなかった。もし本当に手を出したのが事実なら、彼(チュアメニ)を招集してプレーさせたことは間違いだったと思う。まあ、本当のところは何があったのか知らないけれどね』と苦言を呈している。

一部では、ヴィニシウスがエムバペを批判の的にするために内部情報をメディアにリークしているという疑惑も浮上した。これに対し、ジャーナリストのフアンマ・ロドリゲスは『信じられない。アルベロアがエムバペに第4のフォワードだと言ったなんて、あり得ない。ヴィニシウスにはそんなリークをする必要はない。チュアメニとバルベルデがロッカールームで問題を起こした時、彼がバルデベバスから笑顔で出てきたのはカメラがあったからだ』と擁護しつつも、『ヴィニシウスにもう一度言う。こんなことは割に合わないから、タオルを投げて出て行くべきだ』と退団を勧告する事態となっている。

こうした無秩序な状況を立て直すため、モウリーニョはチームの新たな絶対的リーダー(アルファオス)として、エムバペでもヴィニシウスでもなく、ティボー・クルトワを指名した。モウリーニョはすでにクルトワと直接連絡を取り、クラブの現状と今後のビジョンについて共有している。また、これまでのキャプテンであったバルベルデからはすでに腕章が剥奪されており、チーム内のヒエラルキーは根底から覆されようとしている。

(via SPORT / ElDesmarque / Mundo Deportivo / MARCA)