最後のオレンジトロフィーでの敗北と主将ガイアの一発退場劇

バレンシアは本拠地メスタージャで行われた伝統のプレシーズンマッチ、第54回オレンジトロフィーにおいて、プレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドに1-2で敗れ、3年連続でのトロフィー獲得を逃しました [1-3]。試合は開始早々の4分、新戦力のスイス代表MFフィリップ・ウグリニッチがペナルティーエリア手前から左足で放った強烈なミドルシュートがゴール右上の隅に突き刺さり、バレンシアが劇的な先制ゴールを奪いました [3-6]。バレンシアはその後もハイプレスとアグレッシブな守備でニューカッスルを圧倒し、ウグリニッチには追加点の決定機もありましたが、これは枠を外れました [3, 5-8]。

しかし、前半30分に試合の運命を一変させる悪夢が起こります。左サイドで対峙するエランガに突破を許しかけたキャプテンのホセ・ルイス・ガイアが、親善試合とは思えないほど非常に危険な両足でのスライディングタックルを見舞いました。エランガはそのまま担架でピッチを去る事態となり、審判は躊躇なくガイアに一発レッドカードを提示しました。バレンシアは数的不利に陥り、システムを急遽変更して佐藤竜之介を右のウイングバックに下げる対応を強いられました。

10人となったバレンシアは粘り強く守っていましたが、後半51分に手痛い自滅から失点を喫します。GKディミトリエフスキからの処理しづらいパスを受けたギド・ロドリゲスが、相手のプレスに焦ってエリア付近で致命的なバックパスのミスを犯し、これをウィサにかっさらわれて同点ゴールを許しました [3, 4, 11-13]。その後、交代出場したカンテラーノのオトルビが右サイドを何度も切り裂き、ダンジューマに2度の一対一の決定機を供給したものの、ダンジューマがトラップミスとシュートミスで決定機をことごとくフイにしました [14-16]。すると後半75分、バレンシアはカウンターから再びウィサに逆転ゴールを決められて万事休すとなりました。試合終了後、ピッチ上には激しい口笛が吹き荒れ、契約延長したばかりのカルロス・コルベラン監督に対して「コルベラン辞任」を求めるシュプレヒコールがスタンドから響き渡るなど、開幕を前にスタジアムの雰囲気は非常に緊迫したものとなっています [17-19]。(via SPORT) (via ElDesmarque) (via MARCA)

クラブの象徴メスタージャの悲劇的な保守管理状況とサポーターの告発

103年もの輝かしい歴史を紡いできたスペインフットボールの聖地メスタージャは、Nou Mestallaへの移転計画に伴い、今シーズン限りでその歴史に幕を下ろすことが決定しています。しかし、その記念すべき最後のシーズンを迎えたメスタージャの現状は、目を覆いたくなるような悲惨な半放置状態にあります。これに怒りを覚えたバレンシアの主要な株主団体であるLibertad VCFのメンバー、デビッド・ヌニェス氏が、スタジアムの惨状を写真付きでSNS上で告発し、サポーターの間で大きな話題となっています [22-24]。

ヌニェス氏はクラブの姿勢を激しく非難し、『クラブは「永遠のメスタージャ」という美しいスローガンを掲げていながら、スタジアムの最終年に向けて最低限の清掃や美化活動すら行おうとしない極めて偽善的な態度をとっている。最愛の者をこのような悲惨な状態で迎える人間がどこにいるだろうか。これは、最大株主であるピーター・リムのいつもの身勝手な振る舞いに他ならない。彼らの真の目的は、ピッチでの成功ではなく、単に選手売却で儲けることと、この歴史的なメスタージャの広大な土地を売却して住宅地に変えることだ』と強い憤りを示しました [23-25]。バレンシアの多くのサポーターは、スタジアムがこのような裏口からの惨めな葬儀を迎えるのではなく、美しい状態で有終の美を飾ることを願っています。(via Estadio Deportivo)

聖母への献花と新メスタージャ視察を終えたキアット・リム会長の初観戦と右SB補強への緑信号

ピーター・リム氏の長男でクラブ会長を務めるキアット・リム氏がバレンシアを訪問し、会長就任から1年半にして初めてメスタージャの貴賓席に座ってチームの試合を直接観戦しました [26-29]。キアット・リム会長は試合前日の午前中、カルロス・コルベラン監督やファーストチームの全選手、さらにJavier Solísゼネラルディレクター、Ron GourlayフットボールCEOと共に、バレンシアの守護聖母である孤児たちの聖母のバシリカを訪れ、伝統的な献花式に参加しました。その後、一行は建設再開に向けて工事が進められているNou Mestallaの現場を訪れ、屋根を支えるための50本の鉄鋼製柱や圧縮リングの設置が完了した最新の建設フェーズを直接見学しました。

ピッチ外では、補強が大幅に遅れていることに対してコルベラン監督が大きな危機感を抱いており、とりわけ右サイドバックが一人もいないという極めて歪なチーム編成を早急に解消することを求めていました。これに対し、シンガポールのピーター・リム氏側からついに「右サイドバック補強のための緊急投資」のゴーサインがもたらされました。クラブは現在、獲得リストの最上位に位置づけているアルナウ・マルティネスやチリーノとの間で、8月22日の開幕戦までに交渉を完了させるべく、緊急の獲得交渉をピッチ裏で進めています。(via ElDesmarque)

ディアカビが語る7ヶ月ぶりの復帰への歩みとファンへの団結の訴え

ニューカッスル戦の後半60分、スタジアム中のサポーターから割れんばかりの拍手と喝采を受けてピッチに登場したのが、今年1月3日の負傷以来、実に7ヶ月以上もの間リハビリを続けていたフランス人DFムクタル・ディアカビでした。ディアカビは自身の復帰ロードとチームの現状について、次のように落ち着いた口調で振り返りました。『はるかに気分が良くなっており、足がとてもスムーズに動く。本当に嬉しい。このような大怪我の後では、焦らずに一歩一歩段階を追って進む忍耐力と、筋肉への負荷を適切に管理することが最も重要だ。ここまでの回復プロセスは非常にうまくいっている』。

また、試合後のサポーターからの厳しいブーイングや、ピッチ外での不満が渦巻くクラブの現状についても、キャプテンの一人としてファンへの深い結束を強く求めました。『私たちはまずピッチ上でしっかりと結果を出し、勝利を掴み取ることでファンの信頼を取り戻さなければならない。しかし同時に、このメスタージャの歴史的な最後の1年は、ファンにとってもクラブにとっても特別な意味を持っている。この素晴らしいスタジアムの最後の旅を美しいものにするためにも、選手個人ではなく、このバレンシアのエンブレムのもとにファン全員が私たちとより強固に団結して応援してほしい。チームを全力で後押しする彼らの熱い声援が、とりわけシーズン初戦から不可欠だ』。(via SPORT) (via ElDesmarque) (via Mundo Deportivo)

急造の3バックで守備のリーダーに君臨したペペルが語るリーグ開幕への自信

バレンシアの中盤のダイナモであるペペルは、ニューカッスル戦において本来のボランチではなく、3バックの中央として先発起用される驚きの戦術的アプローチを任されました。ペペルはこの急造ポジションで見事な守備対応と正確なパス配給を披露し、スタンドのファンから何度も大きな喝采を浴びて守備の新たなリーダーとしての資質を証明しました。ペペルはプレシーズンの成果とリーグへの意気込みについて、自信に満ちた言葉で語りました。『退場者が出る前半30分までは、私たちが日々のトレーニングで徹底して落とし込んできた、前線からアグレッシブにプレスをかけて高い位置でボールを回収するという、理想的な攻撃フットボールのコンセプトが非常によく表現できていた。ガイアの退場によってゲームの前提は完全に変わってしまったが、チームは強豪を相手にしっかりと戦術をアジャストして戦った。リーグ戦でもこうした10人での過酷な状況は十分に起こり得るため、開幕前にこのような展開を経験できたことはチームにとって非常に有益なテストになった』。

さらに、開幕が近づくことへのモチベーションについても次のように明かしました。『新シーズンの開幕が予定より少し後ろ倒しになったことでプレシーズンは長くなったが、私たちは新しい戦術コンセプトをしっかりと吸収し、実戦リズムを掴むことができた。開幕戦が本当に待ち遠しい。特に開幕からの最初の2試合をホームのメスタージャでファンの大声援を受けて戦えることは、私たちにとってこの上ない特大のプラスアルファだ。満員のメスタージャの前でプレーすることは何よりのモチベーション。ファンに昨年以上の多くの喜びを届け、この愛すべきスタジアムの最後の年を美しい有終の美で飾りたい』。(via Mundo Deportivo) (via SPORT)

混迷を極めるアンドレ・アルメイダの移籍交渉とセルタへの要求条件

バレンシアにおいて、今夏のピッチ外の最大の注目トピックの一つとなっているのがポルトガル人MFアンドレ・アルメイダの去就です。クラブと選手本人の双方は今夏の移籍による退団方針で完全に一致しています。アルメイダに対しては、イングランド2部のスウォンジー・シティから、バレンシアと選手本人の双方を満足させる極めて高額で魅力的な金銭的オファーが届けられていました。しかし、アルメイダ本人はイングランドの2部リーグでのプレーに対して強い躊躇を示しており、あくまでスペイン1部の舞台、あるいは来季の欧州カップ戦に出場するレベルのクラブでのキャリア維持を望んでいました。

そこへ、1部開幕戦の対戦相手でもあるセルタ・デ・ヴィーゴが獲得を狙って割り込み、本人に具体的なアプローチを開始しました。アルメイダ自身はセルタへの移籍を最も強く望んでいますが、セルタ側からバレンシアへ提示された現時点での移籍金オファーは、スウォンジーが提示した金額を大幅に下回る安価なものでした。バレンシアの強化部は、アルメイダの希望を尊重してセルタへの売却を容認する姿勢を示しているものの、セルタ側に対して『アルメイダを獲得したいのであれば、提示額を引き上げ、スウォンジーの提示額に見合う実質的な金銭的条件を提示すること』を最終合意のための絶対条件として突きつけました。現在、クラブ間での激しい金額交渉が進められており、この数日間の合意形成の行方が注目されます。(via ElDesmarque)

門外のスターへオランダ修行を選択したBチームの歴史的得点王マリオ・ドミンゲス

バレンシアのカンテラが誇る22歳の超有望株ストライカー、マリオ・ドミンゲスが、オランダ1部リーグのエクセルシオール・ロッテルダムへと期限付き移籍することが正式に発表されました。ドミンゲスは、かつてガットゥーゾ監督やボラス監督のもとでファーストチームのピッチを経験したものの、スペインU-19代表としての活動中やトップチーム合流後に深刻な大怪我に見舞われ、長らく不運な時間を過ごしていました。しかし、怪我を克服して臨んだ昨シーズンはBチームのエースとして驚異的なパフォーマンスを披露。公式戦38試合に出場して16ゴールを挙げ、さらにプレミアリーグ・インターナショナルカップでも3ゴールをマークするなど、シーズン16ゴール以上を叩き出してカンテラのセカンドチーム歴代最多得点記録を更新しました。これは、かつてクラブで活躍したフラン・ナバーロやパコ・アルカセル、さらにはラファ・ミルといった歴代の俊英ストライカーたちの記録を上回る偉大な金字塔です。

今夏にクラブとの契約を2028年まで延長したドミンゲスは、自身のプロとしてのキャリアをさらに高い次元へと引き上げるため、オランダでの武者修行を選択しました。今回の期限付き契約には、エクセルシオール側の買い取りオプションが付帯しているほか、バレンシアが彼の将来を完全に失わないよう、バレンシア側に優先的な買い戻しオプションがしっかりと挿入される万全のプロテクトスキームが敷かれています。(via ElDesmarque)

森林火災被災地の市長らへのオマージュと記念ユニフォームの寄付

バレンシアは、今回のオレンジトロフィーの特別な取り組みとして、今夏にバレンシア州全土を襲い、甚大な被害をもたらした凄まじい森林火災からの復興と被災地域への強力な連帯を示す活動を行いました。クラブは、森林火災によって深刻な影響を受けたバレンシア州の18の自治体の市長全員をこの記念すべきメスタージャの記念試合の貴賓席に特別ゲストとして招待しました。キックオフ前には、音楽隊 Vall d'Uixó とソプラノ歌手による美しいバレンシア州歌の厳かな生演奏が満員のスタジアムに響き渡り、火災で亡くなった方々や被災された方々への深い祈りが捧げられました。

さらに、選手たちがこの試合で着用した特別な記念ユニフォームは、試合後に回収され、今回の火災によって極めて大きな経済的打撃を受けた被災地域の観光業や飲食店、商業関係者を直接支援・勇気づけるための復興シンボルとして全数が寄付・贈呈されました。バレンシアCFはピッチ上での勝敗を超えて、傷ついた地域コミュニティを全力で支える社会的責任を果たしました。(via ElDesmarque)

【本日の総括】

バレンシアは最後のオレンジトロフィーにおいて、ガイアの一発退場やディフェンスラインのミスからニューカッスルに1-2で逆転負けを喫し、コルベラン監督への不満が渦巻くなど開幕戦のセルタ戦に向けて大きな危機感に包まれています。しかしピッチ外では、103年の節目を控えるメスタージャの荒れ果てた管理状況に対するLibertad VCFからの告発といった複雑な対立が深まる一方で、負傷から7ヶ月ぶりにピッチに戻ったディアカビの感動的な復帰や、キアット・リム会長による聖母献花、新メスタージャ見学、さらにピーター・リム氏から下された右サイドバック補強資金への緑信号など、激動の新シーズンへ向けてクラブの運命がドラスティックに動き出す非常に重要な一日となりました。