カンファレンスリーグ決勝:クリスタル・パレス 1-0 ラージョ・バジェカーノ
ドイツ・ライプツィヒのレッドブル・アレーナ(約45,000人収容)にて、クラブ創設102年目で初の欧州カップ戦決勝に臨んだラージョ・バジェカーノは、イングランドのクリスタル・パレスと対戦した。貴賓席にはスペインからフェリックス・ボラーニョス(大統領府・法務・国会関係相)、ハビエル・テバス(ラ・リーガ会長)、ラファエル・ロウサン(スペインサッカー連盟会長)、ホセ・ルイス・マルティネス=アルメイダ(マドリード市長)が臨席し、イタリアのマウリツィオ・マリアーニ主審の笛で歴史的一戦が幕を開けた。
ラージョのスタメンは、バタージャ、ラティウ、パテ・シス、ルジューヌ、チャバリア、オスカル・バレンティン(62分メンディ)、ウナイ・ロペス(62分ペドロ・ディアス)、デ・フルトス(69分カメージョ)、イシ・パラソン(77分イリアス)、アルバロ・ガルシア(69分パチャ・エスピノ)、アレマオ。負傷していたルイス・フェリペの代役にパテ・シスがセンターバックとして入り、アルバロ・ガルシアが負傷から復帰して先発に名を連ねた。
前半、クリスタル・パレスは開始40秒からロングスローでペナルティエリア内に侵入するなど、激しいハイプレスを仕掛けてきた。ラージョは徐々に落ち着きを取り戻し、前半25分には左サイドのチャバリアからのクロスにアレマオがダイレクトで合わせるもゴール左に外れる決定機を演出。前半30分過ぎには、バタージャが主審にアピールして試合が約5分間中断された。ラージョのサポーター席で医療緊急事態(急病人の発生)が起きたためだが、その後試合は再開。前半アディショナルタイムにはウォートンのクロスにミッチェルがフリーでヘディングシュートを放つも僅かに外れ、ラージョは九死に一生を得てスコアレスで折り返した。
後半開始直後の49分、試合が動く。ウォートンのミドルシュートをバタージャが弾いてしまい、このこぼれ球をジャン=フィリップ・マテタが押し込んでクリスタル・パレスが先制した。さらに55分、ジェレミ・ピノのフリーキックが両ポストに直撃し、そのこぼれ球からマテタが至近距離でシュートを放つ絶体絶命のピンチを迎えるが、バタージャが足で神懸かり的なセーブを見せ、望みをつなぐ。
1点を追うイニゴ・ペレス監督は、カメージョを投入して2トップに変更するなど攻撃的な采配を見せた。しかし、パレスの強固な守備ブロックを崩しきれず、ペドロ・ディアスやルジューヌのミドルシュートも枠を捉えない。終盤はイリアスやパチャ・エスピノらがサイドからクロスを上げるも決定機には至らず、アディショナルタイムにはアレマオが胸トラップからボレーシュートを放つも枠外。そのままタイムアップを迎え、ラージョの欧州制覇の夢は破れた。(via Estadio Deportivo / SPORT / AS / MARCA / ElDesmarque)
選手個人評価(1x1)と各選手の詳細パフォーマンス
・アウグスト・バタージャ:マテタのゴールに繋がるウォートンのシュートを前方に弾いてしまい、悲劇の主人公として名指しされた。しかし、その直後にマテタの決定的なシュートを足で防ぐ信じられないセーブを見せ、チームの息の根を繋ぎ止めた。
・アンドレイ・ラティウ:右サイドを何度も駆け上がり、守備でも奔走。攻撃に深みをもたらす粘り強いプレーを見せた。
・フロリアン・ルジューヌ:まさに「帝王」。ディフェンスラインを統率し、フィジカルの強いマテタとのデュエルで大半を制覇。前半にはミッチェルの折り返しを間一髪でクリアするなど完璧な守備を見せた。
・パテ・シス:センターバックとして出場。コントロールミスがいくつか見られ、あわや退場となる激しいタックルで前半19分にイエローカードを受けた。メンディ投入後は中盤にポジションを移した。
・ペップ・チャバリア:非常に正確で、大きなミスなく左サイドを守りきり、アレマオへの完璧なクロスも供給した。
・オスカル・バレンティン:「働き者」。中盤で泥臭い仕事をこなし、ルーズボールを回収してチームを動かす役割を全うした。
・ウナイ・ロペス:試合の激しいペースに適応するのに苦労し圧倒される場面もあったが、前半には枠を僅かに外れる惜しいシュートを放った。
・イシ・パラソン:試合を通して存在感が薄く、プレーにほとんど影響を与えられなかった。後半はほぼ姿を消し、アルバロへのクロスで少しチャンスを作ったのみに留まった。
・ホルヘ・デ・フルトス:攻撃での存在感はいつもほどなく、危険なエリアでボールを受けられなかった。守備に追われる時間が長かった。
・アルバロ・ガルシア:エネルギッシュに左サイドで活動し、前半に最初のチャンスを創出。いつものようにピッチで全てを出し切った。
・アレマオ:ラージョの攻撃を牽引し、常に相手センターバックを脅かした。ペナルティエリア内での左足ボレーや前半の決定機を逃したのが悔やまれる。
・ノベル・メンディ(62分〜):オスカル・バレンティンに代わってCBに入り、パテ・シスを中盤に押し上げた。有用な働きで、パレスのカウンターを防ぐ重要なカットも見せた。
・ペドロ・ディアス(62分〜):フレッシュな脚力を提供し、プレーに落ち着きをもたらした。
・セルヒオ・カメージョ(69分〜):逆転を狙うための最高のカードだったが、チームが最も彼を必要としていた時に目立つことができなかった。
・パチャ・エスピノ(69分〜):左サイドから執拗にクロスを入れようと試みたが、フィニッシャーを見つけられず。
・イリアス・アコマック(77分〜):突破力で危険を生み出すリソースとなるはずだったが、存在感を示せなかった。(via Mundo Deportivo / MARCA)
イニゴ・ペレス監督と選手たちの試合後コメント
イニゴ・ペレス監督は試合後、次のように総括した。『アテネでの試合は乗り越えるのが難しかったが、我々は立ち直り、学ぶことができた。準決勝では全く異なるチームを見た。ここまで来るのに役立った学びだ』とこれまでの軌跡を振り返り、パテ・シスをセンターバックで起用した理由については『このフェーズにおいて、シスの特徴がより我々を助けてくれると考えた。ルイス・フェリペが負傷している中で、彼の戦術的・感情的な安定感が他の選手にはないものを提供してくれる。オスカル・バレンティンはどんな状況でも応えてくれるからだ』と説明した。さらに『この歴史的な機会にラージョの監督でいられることは特権だ。勝利を祝いたかったし、ファンには素晴らしいシーズンを楽しんでもらいたかった』と悔しさを滲ませた。
キャプテンのイシ・パラソンは、涙をこらえきれずインタビューが途中で中断するほど感情を昂らせていた。『本当に悲しい。この全ての人たちにタイトルを捧げられなかった。特にトレホのためにも勝ちたかった』と語り、『このシーズンに成し遂げたことを評価しなければならない。信じられないほどだ。我々のグループ、我々のファン...彼らの声は誰よりも響いていた。最後を飾ることはできなかったが、立ち上がり、来年はこの人たちに再び希望を与える。彼らはここにいるために多大な経済的努力をしてくれたのだから』とファンに感謝。試合については『相手はとても良いチームで、我々は少しリスペクトしすぎた。ボールを持った時に正確さを欠いた。相手がそれほど多くのことをしたわけではないが、敗北を受け入れなければならない。来年またヨーロッパに入るために戦う。そのためのチームがあることは証明した』と前を向いた。
オスカル・バレンティンは、『チームはいつものように全てを出し切った。今日はどの瞬間も快適ではなかった。彼らは我々にとって非常にフィジカルで堅固なチームだった』とパレスの強さを認め、『相手はずっと快適そうだった。素晴らしいチームだ。我々の人々に喜びを与えられないのが残念だ』とコメント。『この過程、今日の試合前、これまでの日々を大いに楽しんだ。ファンと一緒に楽しみたい。決勝まで来られたのは贈り物だが、ケーキの上のチェリーになるはずだったのでチームは打ちのめされている』と心境を吐露。それでも『このファンには言葉もない。地域に少しの喜びを与えられたことは素晴らしいことだ。カップを持ち帰りたかったが、歴史的なことなので彼らと祝わなければならない』と誇りを口にした。
試合に出場できず、ほろ苦い別れとなったオスカル・トレホも思いを語った。『信じられないほど痛い。全てをやり尽くしたからだ。人々の犠牲を思うと辛い。彼らが私と同じように誇りに思ってくれることを願う。チームメイトが全てを出し切るのを見た。このような試合では感情をコントロールするのが難しい。努力と愛でここまで来られると多くの人に教えられた』と述べ、『ファンに感謝する。彼らのために痛みが大きい。この旅のために全てのお金を使ってくれたから。きっとすぐに喜びがあるだろう。彼らは私に全てをしてくれる。私は人々の愛情を持って帰る。それが最も素晴らしいことだ』とバジェカスのファンへの永遠の愛を語った。(via MARCA / Mundo Deportivo / SPORT)
試合前の舞台裏:アレマオの涙、国王からの激励電話、指揮官の言葉
キックオフの瞬間が近づくにつれ、選手たちの感情は頂点に達していた。ピッチに整列し、カンファレンスリーグのアンセムが鳴り響く中、ブラジル人FWアレマオは感極まってこらえきれずに涙を流した。その隣でイシ・パラソンも感情を昂らせながら『行くぞ、ラージョ!』と力強く叫び、チームメイトを鼓舞していた。
また、試合の数時間前には、ドイツへ赴くことができなかったスペイン国王フェリペ6世がラージョのラウル・マルティン・プレサ会長に直接電話をかけた。国王は、クラブの102年の歴史で初の欧州カップ戦決勝を戦うチームとイニゴ・ペレス監督に向けて、スペイン中が応援しているという激励の言葉を伝えた。マルティン・プレサ会長自身も試合前、『これはクラブの歴史上最も重要な試合であり、我々が102年間夢見てきたものだ』とこの一戦の重みを語っていた。
イニゴ・ペレス監督は試合前日のミーティングで、選手たちに対して『校庭で遊んでいた子供の頃のような無邪気さと喜びを取り戻してほしい』と要求し、プレッシャーから解放しようと努めた。また、相手のクリスタル・パレスについて『我々と特徴を共有しており、犠牲を理解する方法などで共通点がある。大会の初めに対戦相手を選べるとしたら、彼らを選んでいただろう』とリスペクトを口にしていた。(via MARCA / ElDesmarque / AS / Mundo Deportivo)
バジェカスとライプツィヒを揺るがした熱狂的なファンの応援
ドイツ・ライプツィヒには11,000人を超えるラージョファンが陸路や空路を乗り継いで集結した。試合前にはリヒャルト・ワーグナー広場に設置された「ファンゾーン」で大合唱が起き、街は完全にバジェカス地区と化していた。スタジアムでは、イングランドのファンが多数を占める中でも、ラージョのウルトラス「ブカネロス」が陣取るゴール裏はパレスファンを完全に沈黙させるほどの圧倒的な声援を送った。キックオフ前には、クラブの100周年記念アンセムの歌詞である『愛する人よ、それを地域へ持ち帰って。ドクロのために、一生涯を(Llévala al barrio, mi amor. Por la calavera, la vida entera)』という巨大なメッセージとモザイクのティフォを展開。さらに、1週間前に28歳で亡くなり、この決勝のチケットを持っていた熱狂的なファン、ダビド・ロペス氏に捧げる横断幕も掲げられた。試合終了後、敗北に涙するファンが多数映し出されたが、『あなたと共に敗れること以上の勝利を私は知らない(No conocí mayor victoria, que contigo una derrota)』という横断幕が掲げられ、選手たちをスタンディングオベーションで称えた。
一方、マドリードのバジェカス地区でも、シーズンチケット保持者の80%がライプツィヒに向かったにもかかわらず、スタジアムに残ったファンが巨大スクリーンで試合を観戦した。会場は満員となり、まるで選手が目の前のピッチにいるかのような雰囲気で盛り上がり、『朝はコーヒー、午後はラム酒、俺たちをライプツィヒに連れてってくれ、イシ・パラソン』というお馴染みのチャントや『やればできる(Sí se puede)』の大合唱が響き渡った。試合後、バジェカスでは敗戦にもかかわらず選手たちへの大きな拍手と応援歌が鳴り響き、「バジェカスは他とは違う」ことを改めて証明した。
また、ホルヘ・デ・フルトスの故郷であるセゴビア県の人口わずか90人の小さな村、ナバレス・デ・エンメディオでも、村のバルに住民が全員集まり、歴史的な決勝を戦う彼を全力で応援する温かい光景が見られた。(via AS / MARCA)
イニゴ・ペレス監督の退任・ビジャレアル行きの噂と夏の移籍市場への影響
ラージョの快進撃を牽引した38歳の青年監督、イニゴ・ペレスの未来は、バジェカスから離れる可能性が高いと報じられている。公式な発表はまだないものの、来季はビジャレアルの監督に就任する見込みである。アンドニ・イラオラのアシスタントとしてやって来て、その後クラブ史上初の欧州タイトルを夢見させた監督として、彼はラージョの歴史において常に大きな愛情を持って記憶されるだろう。
さらに、ラティウ、パテ・シス、デ・フルトス、チャバリアなど、今季ヨーロッパの舞台で見事な活躍を見せた選手たちは夏の移籍市場で高い評価を受けることになり、長期的なプロジェクトを持たないラージョにとっては、多くの選手が引き抜きの対象となる可能性が高い。マルティン・プレサ会長は、ベンチの新たな指揮官を含めて、チームの再構築を早急に迫られることになる。
ラージョは今大会、予選のネマン・グロドノに始まり、シャムスンスポル、AEKアテネ、そしてストラスブールといった強豪を次々と破って決勝に進出。ホームのバジェカスではラ・リーガの上位4チームが1勝もできず、ヨーロッパの舞台でも今夏の補強に1億5000万ユーロを費やしたクリスタル・パレスしかラージョを倒すことができなかったという事実は、彼らの実力を雄弁に物語っている。(via Mundo Deportivo / MARCA / ElDesmarque)
他クラブ選手や著名人からの称賛コメント(ジェレミ・ピノ、アルメイダ市長、ハビ・フエゴ)
クリスタル・パレスに所属するスペイン代表WGジェレミ・ピノは、試合前の会見で『パレスのスタッフやチームメイトがラージョのことをどれくらい知っていたか正直分からない。私は彼らをよく知っているし、何年も対戦してきたから、彼らのプレースタイルや友人たちの情報をチームに提供して助けた』と、ラージョのスカウティングに自ら協力したことを明かした。
マドリードのホセ・ルイス・マルティネス=アルメイダ市長は、自身は熱狂的なアトレティコ・マドリードのファンであると公言しながらも、ライプツィヒのスタジアムに駆けつけた。『ラージョは今、マドリードの第一のチームだ。欧州の決勝に到達した唯一のチームだからね。下町のチームだが、途方もない魂を持っている。ストラスブールでの準決勝で見せたようなパーソナリティを本当に羨ましく思う。市長としてレアル・マドリードの欧州決勝には行ったが、アトレティコのはないね』と自虐を交えながらラージョの戦いぶりを大絶賛した。
元ラージョの選手であるハビ・フエゴは、ラジオ番組でラージョの特別な帰属意識について語り、『労働者階級の地域の中にスタジアムがあることで、サッカー選手が「別世界に住む触れられない存在」という役割を失う。ファンが毎週日曜日、ここが特別な場所だと思い出させてくれる。バジェカスは本当に素晴らしい場所だ』とその唯一無二の環境を称賛した。(via SPORT / ElDesmarque / MARCA)
大会賞金と来季ヨーロッパリーグ出場権への影響
この決勝戦の結果により、クリスタル・パレスは賞金700万ユーロを獲得し、今季のプレミアリーグを15位という成績で終えたにもかかわらず、来季のヨーロッパリーグ(EL)グループステージへの直接出場権を手にした。
一方のラージョ・バジェカーノは、カンファレンスリーグのこれまでの戦いで約1495万2344ユーロ(約1500万ユーロ)の賞金を獲得しており、もし優勝していればさらに300万ユーロが追加されるはずだった。この金額はクラブの財政にとって非常に重要なものとなる。さらに、ラージョはラ・リーガを8位で終えており、今回優勝していれば来季のEL出場権を得られたが、敗戦によりその夢は完全に絶たれた。しかし、スペインサッカーの誇りを保ち、圧倒的な資金力を持つプレミアリーグのチームに対して真っ向から見事な戦いを見せたことは、ヨーロッパ中から多大な尊敬を集める結果となった。(via AS / ElDesmarque / MARCA)
【本日の総括】
クラブ史上初の欧州タイトル獲得は惜しくも叶いませんでしたが、資金力で勝るプレミアの強豪を最後まで追い詰めたラージョの勇姿と、バジェカスの誇りを胸にライプツィヒを占拠したファンの熱狂は、間違いなくフットボールの歴史に深く刻まれました。監督や主力の去就など来季に向けた不安要素はあるものの、彼らが今季見せた奇跡の歩みは色褪せることはありません。