レアル・マドリード ムニティス移籍が生んだ「恐怖の条項」の歴史

レアル・マドリードが導入した「恐怖の条項」は、2002年にレーシング・サンタンデールへ期限付き移籍したペドロ・ムニティスの恩返しゴールがきっかけだ。この条件は2019年8月まで運用された歴史的な契約の原点であり、現在は改めて注目を集めている。さらに、15年ぶりとなる両クラブの再戦を目前に控えたタイミングであるという。

1929年3月10日にラ・リーガの開幕期で初めて対戦したレアル・マドリードとレーシング・サンタンデールは、2011年以来となる1部リーグでの対決を迎える。ヘントやサンティジャーナといった白き伝承を彩る名選手たちが両クラブを結んできたが、その歴史の中で最も異彩を放つのがムニティスの移籍をめぐる騒動だった。

元スペイン代表の小柄なウインガー、ペドロ・ムニティスは2000年夏のレアル・マドリード会長選挙の最中に獲得が発表された。彼はユーロ2000でフランス代表DFトゥラムを翻弄した実績を持つ一方で、この補強は当時の管理委員会が主導したという。さらにスポーツディレクターのピリとビセンテ・デル・ボスケ監督の承認を得て進められた形だ。

移籍金は22億ペセタ(約1300万ユーロ)にのぼり、当時の会長候補であったロレンソ・サンスは関与を否定した。一方で選戦を制して会長に就任したフロレンティーノ・ペレスは『ムニティスは素晴らしい選手だが、管理委員会の振る舞いは遺憾だ。あと5日待てなかったのか』と怒りを露わにしていた。

鳴り物入りで加入したムニティスだったが、星々が煌めくレアル・マドリードでの2シーズンは満足な出場機会を得られなかった。そのため、3年目となる2002-03シーズンの開幕直前、古巣への期限付き移籍が決定したという。これはレーシングのマネージングを務めるマノロ・プレシアード監督の強い希望を受けた結果だ。

この移籍交渉は移籍市場の締め切り直前に妥結し、レアル・マドリードがムニティスの年俸の70%を負担するという異例の条件が設定された。さらに選手本人も移籍を成立させるため、年間36万ユーロという巨額の給与を自ら放棄する決断を下していた。

2002年10月19日の第6節、レアル・マドリードは敵地サンタンデールに乗り込んだ。クリスティアーノ・ロナウドらを擁するデル・ボスケ監督のチームは、UEFAスーパーカップやチャンピオンズリーグを含む公式戦で7勝3分けと無敗を誇っていた。しかし、この試合では0-2の敗北を喫する結果となった。

この一戦で主役となったのが、貸し出されていたムニティスだった。彼はゴールキーパーのイケル・カシージャスの頭上を越える鮮やかなループシュートでチームの2点目を奪うと、興奮のあまりユニフォームを脱ぎ捨てて全身で喜びを表現した。

試合前にデル・ボスケ監督は、自身が過去にカステリョンやコルドバへレンタルされた経験を引き合いに出し、『自分なら親クラブとの試合には出ないという決断を下す』とコメントしていた。しかし試合後には『ムニティスはほかの選手と同様に素晴らしかった。我々にとっては私が指揮を執って以来、最悪の試合だった』と認めざるを得なかった。

シーズン後半戦のベルナベウでの対戦では、マドリードが4-1で勝利を収めたが、ムニティスはピッチに立たなかった。これは契約上の制限によるものではなく、右足第5中足骨の負傷によるものであったが、彼はチームに同行してスタンドから試合を見守った。

その後、レアル・マドリードを退団したムニティスが再び同クラブのユニフォームを着ることはなかった。しかし、彼が放った恩返しゴールや、その後に続いたモリエンテス、エトーらレンタル選手の活躍が注目を集める。そのため、クラブ幹部は重大なルールの改正に踏み切ることとなった。

それが、自クラブから期限付き移籍で放出された選手が、国内リーグ戦において親クラブと対戦することを一切禁止する「恐怖の条項」の導入である。この取り決めはUEFA主催の国際大会では適用が認められていないものの、レアル・マドリードは国内において2019年8月まで厳格に運用を継続した。

レアル・マドリードが導入したこの慣行は、やがて他の多くのラ・リーガのクラブにも波及し、スペインサッカー界における移籍契約の常識として定着していった。自らの手で育てたり買い取ったりした選手に牙を剥かれるリスクを回避する手段として、この条項は長年にわたり活用された。

この出来事は、期限付き移籍の給料負担や対戦可否の条件設定が、単なる一試合の結果にとどまらないことを意味する。むしろ、リーグ全体の移籍市場のルールやクラブ経営のあり方にまで、決定的な影響を及ぼすという。歴史的な条項の引き金となった両者の戦いが再現される中で、契約をめぐる過去の教訓がどう引き継がれているかが今後の焦点だ。(via MARCA)

【本日の総括】

セビージャは新補強と既存戦力の融合により前年の低迷から見事な再起を果たし、ラ・リーガの上位争いに名乗りを上げた。一方でレアル・マドリードとレーシングの再戦は、過去のムニティス移籍と恐怖の条項という移籍市場の歴史を思い出させる。今週末に行われる両カードのピッチ上の結果とともに、各クラブの戦力運用と契約戦略の結実が注目される。