バレンシアCF 詳細レポート (2026年8月22日)

開幕セルタ戦は不満の0-0ドロー、ブーイングと監督辞任コールの逆風が吹くメスタジャ

104年の歴史を誇るメスタジャ・スタジアムが迎える、文字通り「最後のシーズン」の幕開け。第1節のベティス戦が延期されたため、このセルタ・デ・ビゴ戦が事実上の開幕戦となりました。43,684人の大観衆が、30度を超える酷暑と湿度70%の蒸し暑い夜に詰めかけました。しかし内容はきわめて低調で、枠内シュートはバレンシアがわずか2本、そのうち2本目は95分という体たらく。最終的に0-0の泥沼ドローに終わりました。

前半10分、新星のサト(佐藤龍之介)の美しいお膳立てからダンジュマが決定機を迎えたものの、シュートは無情にも枠を大きく外れました(サトのオフサイド判定があったものの、ゴールが決まっていればVARで覆っていた可能性が非常に高かった場面です)。

前半24分には、セルタのエル・アブデラウイに裏を突かれ、飛び出したGKディミトリエフスキを嘲笑うループシュートを放たれるが、DFセサール・タレガが神がかったスピードで戻り、無人のゴールライン直前でボールをクリアしてチームを救いました。

前半終了間際、ハビ・ゲラの素晴らしいカウンター突破から、エリア内で完全にフリーとなったフィリップ・ウグリニッチへラストパスが渡ったが、ウグリニッチの力ないシュートはRaduの正面を突きました。

後半はセルタに完全に主導権を握られ、終盤の88分にはセルタのマルコス・アロンソにゴールを脅かされるきわめて危険なシュートを許しました(わずかにゴール右へ外れる)。94分、途中出場ディエンのクロスからのこぼれ球をギド・ロドリゲスがダイレクトで狙うもRaduに防がれました。

スタンドはフラストレーションを爆発させ、「 Queremos un tiro a puerta (シュートを打て!)」のチャントを叫び、試合終了時にはスタジアム中に凄まじいブーイングが吹き荒れました。さらに、一部のサポーターからは早くも「 Corberán, dimisión (コルベラン、辞任しろ)」の合唱が沸き起こり、不穏なシーズンスタートとなりました。(via SPORT / via MARCA / via Mundo Deportivo / via Estadio Deportivo)

コルベラン監督の反論と5バック採用の意図、要求を歓迎する強い覚悟

試合後の会見で、カルロス・コルベラン監督は試合を『きわめて均衡していた』と分析。前半は自分たちのペースで進められた時間もあったが、後半開始直後の15分から20分にわたり、セルタのボールポゼッションと高い位置でのプレスに屈し、望む以上に引いて守らざるを得なくなったことを認めました。

スタジアムで起きた自分に対する辞任コールについて尋ねられると、監督は一切の言い訳をせず、真っ向からその責任を受け止める発言をしました。

『私はいつもメスタジャを尊重しています。このスタジアム、このサポーター、そして私のクラブに対する敬意はこれ以上ないほど高いものです。私は要求されることの同盟者であり、その要求に自らをコミットさせています。チームが勝てない時に受けるすべての批判を喜んで受け入れます。私が真っ先に手を挙げてすべての責任を負います。なぜなら、それこそが現状を変えるための唯一の方法だからです』

さらに、物議を醸した「5バック」の採用についても詳しく説明しました。ルイス・リオハの負傷欠場や、ディミトリ・フルキエが回復プロセスの途中にあり、右サイドバックの専門職を補強できていないというスカッドの歪みが理由であったと明かしました。

『プレシーズン中、こうした怪我や特定のポジションの不足という状況下で、チームが競争力を保つための最善の選択肢が5バックだった。しかし、これは一時的なものではなく、シーズンを通して多様性(versatilidad)を持たせたい。相手や状況に応じて4バックと5バックを柔軟に使い分けることが、今のチームに必要な戦術的豊かさだ』

また、デ・ハスの前半での負傷交代についても言及し、足首への激しい打撲によるものであり、ベティス戦での起用は回復状況次第だと説明しました。(via MARCA / via Mundo Deportivo / via ElDesmarque)

7ヶ月ぶり奇跡の復帰を飾ったディアカビと新加入選手たちの評価

苦しい戦いの中で、メスタジャのファンを最も感動させたのが、DFムクタル・ディアカビの帰還でした。ディアカビは昨シーズンの大怪我から、およそ7ヶ月にわたる長く過酷なリハビリを乗り越え、ハーフタイムに負傷したデ・ハスに代わって急遽ピッチへ入りました。

左センターバックとしてピッチに入るや否や、ブランクを感じさせない驚異的な対人の強さとスピード、冷静なカバーリングを披露。セルヒオ・ジラルデス監督が送り込んだイアゴ・アスパスの決定的なスルーパスを完璧に読み切ってカットするなど、守備陣を統率しました。

一方で、その他の新戦力やスタメン陣の評価は分かれました。GKストーレ・ディミトリエフスキは、前半にハビ・ロドリゲスの強烈なミドルシュートを素晴らしいセービングで防ぐなど、安定した守備を見せてクリーンシート(0-0)に貢献し「7」の高評価。

しかし、後半途中にウグリニッチに代わってデビューを果たした新加入MFアリウ・ディエンは、ピッチに入るや否や軽率なファウルを繰り返し、ボールロストを連発。メスタジャのファンを大いに失望させ「3」の最低評価を突きつけられました。

また、今夏に加入し背番号「2」を着用したギド・ロドリゲスは、中盤の底で抜群のポジショニングと落ち着きをもたらす「 diapasón (音叉/リズムメーカー)」としての役割を果たし、合格点の「6」を獲得。

デビュー戦となったDFデ・ハスは、相手のセルヒオ・カレイラに股抜きをされて軽率なファウルで警告を受けるなど不安定さを見せ、足首の負傷も重なりハーフタイムで退きました。(via SPORT / via ElDesmarque)

公式戦初出場を飾った佐藤龍之介の輝きと交代を巡るスタンドの怒り

この試合で最もまばゆい光を放ったのが、プレシーズンで大活躍し、バレンシアCFの100年を超える歴史において「公式戦に出場した初の日本人選手」となった10代の佐藤龍之介(Ryunosuke Sato)でした。

サトはフィリアル(Bチーム)登録の背番号「39」を背負い、右ウイングハーフ/攻撃的ミッドフィルダーとしてスタメン出場。試合開始から右サイドを制圧し、非常にアグレッシブにボールを呼び込んで攻撃を牽引。対面するセルタのマルコス・アロンソらに恐れることなく挑み続けました。

前半10分には、ペペルからのロングパスを見事なトラップで収め、エリア内のダンジュマへ決定的なラストパスを供給。ダンジュマがこれを外したためアシストにはならなかったが、その高い攻撃センスにメスタジャは大いに沸きました。

しかし後半56分、コルベラン監督がサトを下げてウマル・サディクを投入する交代を決定すると、メスタジャのスタンドからは地鳴りのような大ブーイングが発生しました。サポーターはチームで最も躍動していた佐藤の交代に全く納得がいっておらず、この交代采配がコルベラン監督への不満と辞任コールの引き金となりました。サト自身は「6」または「7」の高評価を受け、今やチームの攻撃に欠かせない創造性の源であることを完全に証明しました。(via ElDesmarque / via SPORT)

GKファン・ウーフェレン獲得合意!ザーンダム出身4人目のバレンシア戦士誕生へ

移籍市場の最終盤、バレンシアは手薄なゴールキーパー陣の補強として、イングランドのイプスウィッチ・タウンからオランダ人GKケイン・ファン・ウーフェレン(Kayne Van Oevelen)のレンタル獲得で完全合意しました。

移籍金(レンタル料)は約50万ユーロ(出場機会が基準に満たない場合は追加ペナルティの可能性あり)、買い取りオプションは含まれない1年間の期限付き移籍です。イプスウィッチのゲイリー・オニール監督が、控えキーパー陣(ウォルトンやパルマー)のコンディション不良(パルマーの肘の怪我など)を理由に、ウーフェレンを数日間引き留めるよう求めたため合流が遅れていました。しかし、イプスウィッチが公式に公開した新シーズンのプレミアリーグ登録メンバー26名の紹介動画に、すでにウーフェレンの姿はなく、移籍は確定。ウーフェレンは日曜日にバレンシアへ到着し、ディミトリエフスキとの激しい正GK争いに臨みます。

興味深いことに、ウーフェレンがバレンシアに加入することで、彼はクラブの歴史上4人目の「ザーンダム(Zaandam)」出身のオランダ人選手となります。人口わずか7万3000人ほどのオランダの小さな街ザーンダムですが、過去にジョニー・レップ、ジャスティン・クライファート、そして今夏加入したデ・ハスが生まれており、バレンシアにとって極めて縁の深い「聖地」となっています。(via Superdeporte)

主力アルメイダのセルタ移籍とラバのオビエド移籍が秒読み、イランソのサラゴサ移籍が決定

移籍市場の閉幕を控え、選手たちの放出と整理が怒涛のスピードで進められています。

まず、チームの主力ミッドフィルダーであるアンドレ・アルメイダのセルタ・デ・ビゴへの完全移籍が秒読み段階です。アルメイダはイングランドのスウォンジー・シティからのオファーを、スペインでのプレー継続を望む理由で自ら拒否。ヨーロッパリーグ出場権を持つセルタのクラウディオ・ジラルデス監督のプロジェクトに強く魅了されています。

セルタ側はウルグアイ人MFマティアス・ベシーノとの契約を解除してライセンス枠と資金を確保。すでにバレンシアとの間で、移籍金300万ユーロ+変数という条件で大筋合意。バレンシアのフロントは、直接の対戦相手となる土曜日の試合前に移籍を完了させることを断固として拒否したため、週明けにも正式に契約がまとまる予定です。

また、プレシーズンのエルデンセ戦で1ゴール1アシストと大活躍しながらも、コルベラン監督の構想外となっているダニ・ラバ。ラバは残り1年の契約を解除し、セグンダのレアル・オビエドへフリートランスファーで加入することがほぼ確定。両者とも来週中に移籍が完了する見通しです。

さらに、カンテラ(バレンシア・メスタジャ)のキャプテンであり、通算12試合に出場した23歳のDFルーベン・イランソ(Rubo)のレアル・サラゴサへの完全移籍が決定。移籍金はゼロ(フリートランスファー)だが、バレンシアは将来売却時の25%の権利と、優先交渉権(derecho de tanteo)を確保。イランソは月曜日にサラゴサへ飛び、火曜日からイバイ・ゴメス監督の練習に合流、3年契約を結びます。(via ElDesmarque / via Superdeporte)

ピーター・リムへの「 Peter, vete ya 」大合唱と逃亡したキアト会長、無力なグーレイCEO

メスタジャのスタンドで、今シーズンも一切トーンが落ちることなく響き渡ったのが、経営陣への怒りのチャントでした。前半19分、スタジアムを埋め尽くしたサポーターが一斉に「 Peter, vete ya (ピーター、今すぐ出て行け)」を大合唱。さらにメリトン・ホールディングスやキアト・リム、ロン・グーレイに対する批判の声がピッチに降り注ぎました。

クラブの「名目上の会長」であるキアト・リム(Peter Limの息子)ですが、その実態はあまりにも無責任です。キアト・リムは今週、重い腰を上げてバレンシアを訪れ、パテルナの練習場には顔を出したものの、週末のメスタジャのブーイング(chaparrón)を恐れ、試合を観戦することなく「 espantada (敵前逃亡)」のごとく急遽帰国。メスタジャのVIP席に彼の姿はなく、クラブへの愛着の薄さが改めて証明されました。

また、5月29日に大きな期待を背負って就任したロン・グーレイ(Ron Gourlay)CEOも、完全に牙を抜かれています。就任当初は「サステナブルで野心的なクラブの未来」を約束しましたが、実際にはPeter Limが資金の再投資のブレーキを踏み続けているため、独自の補強を進めることができず、補強はすべて国内の安価な既存ターゲットのみ。

グーレイCEOはかつてアル・アハリのCEOを務めた人脈を活かし、サウジアラビアやカタールの市場を徹底的に調査。アル・ナスル所属のブラジル人快速ウイング、ウェズレイ・ガッソヴァやアンジェロ・ガブリエルのレンタル、さらにはアル・アハリのMFアレクスアンデルの獲得交渉を試みたが、すべて資金不足で「冷凍保存(congelada)」状態にあり、いまだ合意には至っていません。この無策な現状に、サポーターの不満は頂点に達しています。(via Superdeporte / via ElDesmarque)

かつてエルマスに振られリサンコスを逃したバレンシア、市場の失態が招いた右サイドバックの悪夢

今夏の市場で、バレンシアが自らの無計画さによっていかに自滅しているかを示す、非常に痛烈な事実が明るみに出ました。

補強のメインターゲットであったマケドニア代表MFエリフ・エルマスが、ライプツィヒからアタランタへの移籍(買取オプション付きレンタル)を完了。実は2025年1月の市場で、バレンシアはエルマスの獲得にほぼ合意していました。しかし、当時のバレンシアが降格争いに巻き込まれていたため、エルマス本人がメスタジャ行きを「 plantón (ドタキャン)」し、トリノへの移籍を選択。今、再び実力者が手の届かない場所へ去っていきました。

さらに悲惨なのが、右サイドバックのポジションです。現在バレンシアは、ティエリをベネツィアに売却し、フルキエが負傷、イランソも退団するなど深刻な右サイドバック不足に喘ぎ、開幕戦で左利きのヘスス・バスケスを右で使わざるを得ない屈辱を味わいました。

しかし、バレンシアは2025年の夏、ルゴに所属し「第一フェデレーション最強の右サイドバック」と称されていた23歳のアレクス・リサンコス(Álex Lizancos)を、わずか50万ユーロ未満で獲得する絶好のチャンスを握っていました。

にもかかわらず、当時のフロントは彼をBチーム登録にしようとこだわり、さらに既存の右バックの売却が進まないことを理由に、わずかな移籍金すら渋って交渉を破談にさせました。その結果、リサンコスはブルゴスへ移籍して大ブレイク。そして現在、そのリサンコスを、右サイドバックの負傷に喘ぐオサスナが「第一チーム用」として獲得間近となっています。

ライバルたちが迅速かつ賢明に補強を成功させる中、かつての自らの失態によって最大の弱点を自ら作り出してしまったバレンシアの無策さには、ため息しか出ません。(via Superdeporte)

【本日の総括】

バレンシアCFは、最後のシーズンとなるメスタジャでの事実上の開幕セルタ戦を0-0の痛恨のドローで終え、決定力不足を露呈しました。コルベラン監督の5バック戦術や佐藤龍之介の輝かしい公式戦デビュー、ディアカビの7ヶ月ぶりの奇跡の復活劇など、ピッチ上で見所はあったものの、佐藤の交代に激怒したスタンドからは凄まじいブーイングと「コルベラン辞任」のコールが吹き荒れました。さらに、アルメイダやラバの流出、ピーター・リムへの抗議、キアト会長の逃亡、さらにはかつて逃したリサンコスのオサスナ移籍間近など、フロントの壊滅的な運営と市場での失態が、早くもシーズンに暗い影を落としています。