ヴァルデベバス再開発プロジェクト:マドリード・イノベーション・ディストリクト計画の全貌
マドリード市役所は、ヴァルデベバスにあるレアル・マドリードの所有地448,000平方メートルの用途変更(再開発)プロジェクトの計画を進めています。これは、かつてクラブに莫大な経済的恩恵をもたらした25年前のパセオ・デ・ラ・カステジャーナの旧練習場再開発に匹敵する、歴史的な巨大プロジェクトです。
この変更案では、これまで「プライベートなスポーツ施設」としてのみ認められていた土地の容積が大幅に変更され、ホテル、オフィス、商業施設、私立大学、民間病院といった経済活動を可能にする施設が建設できるようになります。
現在、この土地の建設可能容積は360,000平方メートルで、すべてがプライベートスポーツ用の制限を受けていました。しかし今回の計画変更により、総容積は532,550平方メートルにまで引き上げられます。
内訳としては、スポーツ用途が84,000平方メートルに縮小される一方、民間設備用途(私立大学、病院、文化・研究施設など)に276,000平方メートル、ホテル・店舗・オフィスなどの第三次産業サービス用途に172,550平方メートルが充てられます。なお、巨大商業施設の建設は明確に禁止されています。
不動産コンサルタント会社Savills(サヴィルズ)の都市計画ディレクターであるアントニオ・プレゲスエロが署名したレポートによると、この再開発完了後の権利価値は3億6009万1250ユーロにのぼると評価されています。Savillsの基準に基づくと、民間設備が1億3386万ユーロ、スポーツ用途が4074万ユーロ、第三次産業サービスが1億8549万ユーロとなります。
現在のスポーツ単一用途(1平方メートルあたり485ユーロ換算で約1億7460万ユーロ)のままの場合と比べると、今回の用途変更だけで「1億8549万ユーロ(約300億円)」もの含み益が発生し、土地の資産価値は一気に2倍以上に跳ね上がります。
クラブはこの再開発地域に「マドリード・イノベーション・ディストリクト」と呼ばれる巨大なハイテクキャンパス(通称:マドリードのシリコンバレー)を建設する計画です。ペレス会長とマドリード州のイサベル・ディアス・アユソ首相も出席した5月のイベントで発表されており、2027年にもすべての手続きが完了し、正式に承認される見通しです。
ただし、このプロジェクトには莫大な費用がかかります。Savillsの試算では、建物の建設費に12億3500万ユーロ以上、インフラや都市化の整備費用に7350万ユーロが必要とされています。
さらに、計画承認の対価として、クラブは緑地や公共道路、公共インフラのために敷地の一部をマドリード市に譲渡しなければなりません。これにより、クラブが所有する私有地面積は120万平方メートルから97万5,729平方メートルへと縮小し、224,000平方メートル以上の公共用土地が創出されます(うち166,315平方メートルが緑地、35,311平方メートルが市営施設向け)。また、法律に従って、再開発で生じる容積の5%に相当する17,400平方メートル(約1870万ユーロ相当の土地権利)をマドリード市役所に譲渡する義務があります。
この取引に対して、地元の政治的野党からは激しい批判が巻き起こっています。
左派政党Más Madridのサラ・ラドラ市議は、次のように述べて厳しく糾弾しました。
『今回の再開発で最も得をするのは、他でもないレアル・マドリードだ。これは国民党(PP)特有のお手盛り都市計画であり、新たな巨大利権の典型例だ。本来は地域のスポーツ設備に使われるはずだった土地が、結局は一部の富裕層向けの高級ホテルや高級コ・リビング、私立病院、私立大学になり、特定の人間だけが私腹を肥やす。ヴァルデベバスの住民に必要なのは、ホテルやオフィスではなく、公立学校や公立診療所、そしてマドリード市街へのアクセスの改善だ』
また、PSOE(スペイン社会労働党)のアントニオ・ヒラルド市議も、市役所側の対応を疑問視しています。
『一人の所有者、今回の場合もまたレアル・マドリードだが、彼らに再開発という形で新たなビジネスチャンスを与えることが、なぜ必要なのか。この計画のどこに市民のための公益が存在するのか。優先されているのは、都市マドリードの利益ではなく、クラブの利益だ』
さらに、ERC(カタルーニャ共和左派)のガブリエル・ルフィアン国会議員も自身のSNSで皮肉たっぷりに次のように投稿しました。
『そんなはずはない。レアル・マドリードは国家がバックについたようなクラブとは経済的に競争できず、選手にはスポーツの栄光という価値だけで支払っている、と私は聞いていたのだけれどね』
(via SPORT / Mundo Deportivo / MARCA)
