劇的ドローの死闘
日曜夜の第4節、RCDEスタジアムは30,475人もの大観衆で埋め尽くされましたが、ピッチを包んだのは気温27度、湿度76%という、9月上旬としては極めて過酷な熱気でした。前半は両者ともに堅実なブロックを敷き、決定機が非常に少ない締まった展開となりました。エスパニョールは、ハビ・エルナンデスの鋭い直接フリーキックが相手GKに阻まれた場面が唯一の得点機となり、スコアレスで試合を折り返します。
後半に入ると試合は一気に激動の展開を迎えます。55分、エドゥ・エスポシトの鮮やかなパスに反応して抜け出し、ゴール前へ突進したロベルト・フェルナンデスを、相手DFサンガンテがスライディングで阻止。これが決定的な得点機会の阻止と判定され、相手に一発退場が命じられます。これでエスパニョールは数的優位に立ち、試合の主導権を完全に握るチャンスを得ました。
しかし、84分に予期せぬ落とし穴が待っていました。ロングボールに対し、ロゲル・ヒノジョがヘディングで後方へクリアを試みたものの、これが痛恨のクリアミスとなり、直前に相手チームへ加入したばかりのストッシンにボールを拾われ、痛恨の先制ゴールを許してしまいます。スタジアムが絶望に沈み、一部の観客が諦めて席を立ち始める中、エスパニョールの選手たちは最後まで牙を剥き続けました。
後半の追加タイムは9分。その終了間際となる98分、マルコス・フェルナンデスが渾身のヘディングシュートを放ちます。シュートは一度クロスバーに弾かれたものの、諦めずにこぼれ球を泥臭く自ら押し込み、起死回生の同点弾。1-1のドローに持ち込み、劇的な形で勝ち点1を死守しました。
スタッツを振り返ると、ポゼッション率は55%と相手を上回り、シュート数でも12本(うち枠内3本)を放ち、決定機を4度作るなど攻撃の姿勢を示しました。
また、試合中には心温まるシーンもありました。前半16分と21分には、両クラブにゆかりのある故アントニ・プエルタと故ダニ・ハルケに捧げる追悼の拍手がスタジアム全体から送られました。さらにハーフタイムには、相手GKヴラホディモスが、暑さで喉を乾かせたゴール裏のエスパニョールサポーターに自ら水のボトルを4本投げ入れ、スポーツマンシップを示す場面が現地でも大きな注目を集めました。(via AS)
判定への大いなる疑問
この試合の行方を決定づけ、今もなお大きな議論の的となっているのが、61分に起きたオマル・エル・ヒラリの幻のゴールシーンです。
ハビ・エルナンデスが左サイドから供給した高精度のクロスを、相手GKがパンチングでクリア。そのこぼれ球をペナルティエリア外で拾ったエル・ヒラリが、目の覚めるような右足のダイレクトハーフボレーを放ちました。低く鋭いシュートはネットを揺らし、スタジアムは熱狂の渦に包まれましたが、VAR室から主審のセスマ・エスピノーサへ交信が入ります。
主審がピッチ脇のモニターでオンフィールドレビューを行った結果、直前に投入されたばかりのエスパニョールのFWマルコス・フェルナンデスがオフサイドポジションにおり、シュートの軌道上で相手GKヴラホディモスの動きを制限し、さらにゴールライン上でクリアを試みようとした相手DFカストリンの視界を遮ってプレーに関与したと見なされ、得点は取り消されました。
この厳しい裁定に、マノロ・ゴンサレス監督は試合後のプレスカンファレンスで大きな疑問を呈しました。
『誰も何が起きたのか、なぜオフサイドなのかを正確には理解できていない。もはや、何がオフサイドで何がそうでないのかが全く分からないレベルに達している。基準を統一するべきだ』と語り、週ごとに判定基準が変化している現状を非難しました。
『オマルのあの素晴らしいゴールで先制していれば、試合の主導権を完全に握ることができた。相手はラインを上げて攻撃に出ざるを得なくなり、我々にとって圧倒的に有利な展開になっていただけに、本当に悔やまれる』と、この判定が試合の運命を大きく変えたと指摘しました。
判定に関与したとされるマルコス・フェルナンデスも不満を漏らしています。
『自分はあの時、その場に立ち止まっており、極力プレーに影響を与えないように努めていた。カストリンの視界を塞ぐような真似は決してしていないと思う』と自身の無実を主張し、この不可解な判定が試合全体の展開を狂わせたと振り返りました。(via SPORT)
古巣へ捧げる魂の咆哮
数的優位に立ちながらも先制点を奪われるという重苦しい展開の中、エスパニョールを救う究極のヒーローとなったのは、今シーズンに期限付き移籍先から復帰したばかりの生え抜き、マルコス・フェルナンデスでした。
98分に泥臭く叩き込んだ同点弾は、彼にとって待望のラ・リーガ1部リーグにおけるキャリア初ゴールとなりました。極限の緊張感の中で大仕事をやってのけたマルコスは、ゴールを決めた直後、ユニフォームを力強くまくり上げ、アンダーシャツに手書きされたメッセージをスタジアムとカメラに向けて誇らしげに掲げました。
そこには、「Ceuta no se vende, Ceuta se defiende」(セウタは売り物ではない、セウタは守るべきものだ)という、昨季を過ごした古巣セウタへの熱いサポートメッセージが記されていました。
試合後、マルコスは特別な感情を込めてその真意を明かしました。
『セウタという街は、私にプロサッカー選手として戦う素晴らしいチャンスを与えてくれた場所。街の人々は私を家族のように温かく迎え入れてくれた。現在、あの街やクラブが非常に困難な状況に置かれ、不当な扱いを受けているのを見て本当に胸が痛む。一刻も早く事態が解決し、平穏な生活が戻ることを心から祈っている。私にできる小さな支援としてこのメッセージを送った。現地の人々が示している素晴らしい連帯と団結を心から尊敬している』。
試合内容については、引き分けという結果に対して『ホームで何としても勝ち点3が欲しかったため、非常に悔しい思いがある』としながらも、『最悪の展開から執念で追いつき、チームが最後まで諦めずに戦い抜く強いキャラクターを示せたことは、今後に繋がる重要な収穫だ』と力強く前を見据えました。(via ElDesmarque)
新戦力の融合と今後の課題
この激闘の中で、RCDEスタジアムのファンが最も沸き立った瞬間の一つが、74分の交代劇でした。今夏の移籍市場における最大の目玉であるブライアン・サラゴサが、エル・ヒラリに代わってピッチに送り込まれ、待望のデビューを果たしたのです。
サラゴサが芝生を踏みしめた瞬間、サポーターからは割れんばかりの拍手と歓声が送られました。彼はその期待に応えるように、右サイドでの破壊力抜群のワンオンワンや、相手ディフェンスの隙を突く鋭いラストパスなど、一瞬でスタジアムの空気を変える素晴らしいパフォーマンスを披露しました。
マノロ監督も、サラゴサの卓越したポテンシャルに大きな賛辞を贈っています。
『ブライアンは一瞬で相手守備を切り裂く抜群の突破力と、ピッチ上の優位性を見極めてゲームを構築する高い戦術眼を持っている。コンディションを早期に万全にし、我々のシステムに完全にフィットしてくれれば、間違いなく攻撃の核として素晴らしい役割を果たしてくれるはずだ』と評価しました。
また、新加入のモスカルドが今回の試合で念願の初先発を飾り、59分までバランスを取りながら奮闘。その後はウルコ・ゴンサレスへとバトンが渡されました。
さらにマノロ監督は、現在ベンチで出番を待つ機会が多い実力派キリンシ・ハルトマンについても言及し、チーム内の健全で激しい競争について説明しました。
『キリンシは技術的なクオリティにおいては、間違いなくこのチームでトップクラスの選手だ。プレースキックの精度、強力なミドルシュート、端正なクロスは一級品だ。しかし、現在左サイドハーフで素晴らしいパフォーマンスを継続しているロゲル・ヒノジョを無理に先発から外すことは不公平に当たる。チームの現状のバランスを維持するためには仕方のない判断だが、キリンシの才能は間違いなく本物だ』と語り、チームの層の厚さに自信を示しました。
一方で、マノロ監督は100試合目の節目となったこの試合で見えた、攻撃面における深刻な課題について強い警鐘を鳴らしました。
『前半の戦い方はあまりにも慎重すぎた。もっとパスの循環スピードを上げ、相手ディフェンスを揺さぶるべきだった。ポゼッションを志向するのは良いが、ただボールを保持するだけでは意味がない。どこに優位性があるかを素早く見つけ出さなければならない。攻撃が機能しないと、結果的に自分たちが長い時間守備に追われ、自滅することになる。この攻撃面の連動不足については、今週のトレーニングで直ちにメスを入れて修正を施す』と厳しい表情で語り、今後のトレーニングでの即時改善を宣言しました。
なお、今回の試合では、負傷を抱えるハビ・プアド、ゴロサベル、キケ・ガルシアが欠場となっています。(via MARCA)
フロントが見据える長期ビジョン
この試合は、今夏エスパニョールのスポーツディレクター(GM)に就任したモンチにとって、30年以上在籍した愛する古巣セビージャとの初の公式戦での直接対決という特別な意味を持っていました。
彼の腕に刻まれた、セビージャ時代に勝ち取った7つのヨーロッパリーグを表す星と「Imperium Nostrum(我らの帝国)」のタトゥーが示す通り、古巣との絆は永遠です。
しかし、モンチは現在のエスパニョールでの役割に完全に集中しています。試合後、彼は現在のクラブの状況について、『我々は今、結果を出し、そして成長していくことが何よりも求められている時期にいる』と力強く語りました。
さらに、マノロ・ゴンサレス監督に対する揺るぎない信頼を強調しました。
『マノロへの信頼は100%、完全にトータルなものだ。我々は短期的な視点だけでなく、中長期的、そして将来的なクラブの成長を見据えて、二人三脚で綿密な補強計画を練り上げてきた。そこにはいかなるブレもない。マノロはクラブに関わるすべての人々から愛されている特別な存在であり、過去3シーズンにわたってチームを牽引し、目標をしっかりと達成してきた実績がある』。
移籍市場の閉幕を経て、モンチは自身のビジョンとマノロ監督との強力なタッグで、エスパニョールをさらなる高みへ導く決意を改めて示しました。(via Mundo Deportivo)
【本日の総括】
10人の相手に対して数的優位を活かせず、手痛い先制点を許すなど反省の多い一戦となりましたが、土壇場98分にマルコス・フェルナンデスが泥臭く決めた同点弾で、執念の勝ち点1をもぎ取りました。判定の議論や攻撃の組み立てにおける課題は山積みですが、新戦力ブライアン・サラゴサの躍動やフロントとの強固な信頼など、今後の巻き返しに期待が高まる激動の夜となりました。
