[バロンドール / FCバルセロナ] トロフィー製作を担う老舗Mellerioが明かす100時間の職人技と秘められた仕掛け
サッカー界最高の個人賞であるバロンドール。授賞式が間近に迫る中、1956年の第1回大会から70年にわたりトロフィーの製作を手掛け続けているパリの伝説的ジュエリーハウス「メレリオ(Mellerio)」が、その知られざる職人技と厳重な秘密保持の裏側を明かしました。
ヴァンドーム広場近くのリュ・ド・ラ・ペ9番地に工房を構えるメレリオは、創業1515年を誇る世界最古の高級宝飾店です。トロフィーは純金製ではなく真鍮で作られており、2つの半球をバーナーの炎でチェリーレッド色になるまで加熱しながら球体に成形。銀ろう付けで接合した後に酸性溶液で洗浄し、ハンマーとタガネを用いて手作業でサッカーボールの縫い目を刻み込んでいきます。
仕上げに純金メッキを施した上で、個別に厳選されたパイライト(黄鉄鉱)の鉱石台座に設置。台座の鉱石が1点ごとに異なるため、完成したトロフィーの重量(約10〜12kg)や形状は毎年変化し、世界にふたつとない唯一無二の芸術品となります。過去に最多受賞を誇るリオネル・メッシのトロフィーも、すべて台座の表情が異なっています。1個のトロフィーを完成させるために費やされる手作業の時間は約100時間に及びます。
職人たちの間でもっとも緊張が走るのが、受賞者の名前や年号を刻む作業です。刻印を担当する彫刻師は世界で誰よりも早く受賞者の名を知ることになりますが、その秘密は厳重に守られています。当主のロー・イザベル・メレリオは『サッカーが大好きな4人の子供たちがいるので、私はものすごいプレッシャーの中にいます。でも誰にも言いません。会社への信頼がかかっていますから』と明かします。さらに、授賞式で名前が発表される直前までトロフィーの刻印部分には「小さな金属カバー」が取り付けられており、受賞者本人が壇上で掲げるその瞬間まで名前が見えないよう工夫が施されていることも公表されました。
1615年にマリー・ド・メディシス女王から特権を与えられて以来、マリー・アントワネットやナポレオン3世の皇后ウジェニーらに愛されてきたメレリオは、1815年にマドリードにも支店を開設。スペイン女王イサベル2世のために制作した「ティアラ・デ・ラス・コンチャス」は現在も王室に受け継がれ、レティシア王妃に着用されるなどスペインとの縁も深く持っています。またスポーツ界では全仏オープンの優勝トロフィー「ムスケテール杯」も手掛けており、14度の優勝を誇るラファエル・ナダルが10回目の制覇の際に特別にレプリカを持ち帰ることを許された唯一の選手としても知られています。
明日ロンドンのロンドン・パラディウムで開催される授賞式にて、アイタナ・ボンマティらに続く第70代の覇者のもとへ届く黄金の球体には、王室やスポーツの歴史を彩ってきた老舗の気高き美学と職人たちの誇りが込められています。(via MARCA)