マノロ・ゴンサレス監督の戦術解剖:可変式「3-4-2-1」の破壊力と露呈したトランジションの脆さ
マノロ・ゴンサレス監督が率いるエスパニョールは、公式な登録システムこそ「4-2-3-1」ですが、ピッチ上では全く異なるアグレッシブな戦術システムを展開しています。ボールを保持した攻撃の局面に入ると、この基本形は完全に解体され、極めて攻撃的な「3-4-2-1」へと変貌を遂げるのです。
そのビルドアップのメカニズムは、まず守護神ドミトロヴィッチのエリアに近い非常に低い位置に3人のセンターバックを並べることから始まります。この低い位置でショートパスを繋ぎ、意図的に相手のハイプレスを自陣深くまでおびき寄せる(アトラクション効果)ことで、中盤以降に広大なスペースを作り出す狙いがあります。
この時、中盤のボランチ(ピボーテ)を務めるウルコとエキスポジトは、相手のインサイドMFを引きつける役割をこなします。それによって生まれる相手DFラインとMFの間のバイタルエリアを、ハビ・エルナンデスとカラの2シャドー(ダブル・メディオプンタ)が攻略する配置となっています。さらに、右サイドバックのエル・ヒラリが一気に高い位置まで駆け上がって右のワイドアタッカーへとシフト。左サイドでも極端に高い位置に攻撃の枚数をかけることで、相手のディフェンスラインに5人を配置して強烈な過負荷(オーバーロード)を生み出します。
このエスパニョールの最終ラインに5枚を配置する攻撃戦術の破壊力は、対戦したレアル・ソシエダの監督マタラッツォをして「エスパニョールが最終ラインに5枚を配置して過負荷をかけてくるため、我々もウイングの選手をDFラインに下げて5バックで同数(5対5)の対応をせざるを得なかった」と認めさせるほど、相手の守備組織を物理的にねじ曲げる強力な効果を発揮しています。さらに試合後半、マノロ監督はFWマルコスを前線に投入し、2トップ(ダブル・アタッカー)体制へと移行して攻撃の厚みをさらに強める采配も見せました。
しかし、この変幻自在で非常に魅力的なシステムには、現在極めて大きな弱点が内包されています。それが、ボールを失った瞬間(トランジション)における守備の脆さです。先日のレアル・ソシエダ戦での敗因もまさにここであり、自陣や中盤での安易なボールロストが瞬時に致命傷となりました。切り替えの遅れから組織的な守備陣形が整う前に、高速カウンターをモロに食らって失点を喫してしまったのです。
この看過できない問題について、マノロ・ゴンサレス監督は試合後の会見で次のようにチームへの厳しい評価と反省のコメントを述べています。
『自分たちのレベルで戦うことができなかった。最初の2試合のパフォーマンスのリズムを早く取り戻さなければならない。それに、プリメーラ・ディビシオン(1部リーグ)というトップ舞台においては、絶対に許されないようなイージーなボールロストが多すぎた』
組織的なプレスやブロックを組めている時の守備は非常に堅実で安定しているエスパニョールですが、ビルドアップ中のパス精度の向上、そして「攻撃から守備への切り替え(トランジション)」のリスクマネジメントの徹底こそが、今後の勝ち点積み上げに向けた最優先の改善事項となっています。(via NoticiasDeGipuzkoa / Mundo Deportivo)
【本日の総括】
ソシエダ戦の敗戦は非常に痛いものでしたが、下部組織「La 21」出身のハビ・エルナンデスと、エースとして覚醒を遂げたロベルト・フェルナンデスの「新ホットライン」の完成は、今シーズンのエスパニョールにとって最大の光です。マノロ・ゴンサレス監督が仕込む可変式「3-4-2-1」の戦術精度を研ぎ澄まし、最大の弱点であるボールロスト時のトランジション(切り替え)を修正できれば、1部の舞台でも十分に他チームを脅かす存在になれるはずです。エースの移籍報道に揺れることなく、一歩ずつ完成度を高めていくことが期待されます。