2026年9月19日(土) | 朝夕刊エディション
La Liga Journal & Media Analytics EL CLÁSICO DIARIO エル・クラシコ・ディアリオ | スペイン現地報道・定点観測ジャーナル

ラシン・サンタンデール vs エルチェCF

ラ・リーガ / jornada-3 / Estadio de Racing / 2026年8月29日(土)

ラシン・サンタンデール 3-2 エルチェCF

試合サマリーと得点経過

ラ・リーガ第3節の幕開けを飾る一戦は、14シーズンぶりに1部復帰を果たしたラシン・サンタンデールが、本拠地エル・サルディネーロに22,496人の大観衆を集めてエルチェCFを迎え撃った。試合は前半、ホームのラシンが圧倒的な破壊力を見せて3点のリードを奪うも、後半にエルチェが猛反撃を見せ、最終盤まで勝敗の行方が分からない極限の緊迫戦へと発展。激闘の末、ラシンが3-2で逃げ切り、11-12シーズン以来となる歴史的な1部での初勝利を飾った。

15分:ヤッシル・ザビリ(ラシン・サンタンデール 1 - 0 エルチェCF)均衡を破ったのは、エルチェ守備陣の致命的なエラーだった。バックパスを受けたエルチェのゴールキーパー、マティアス・ディトゥロが足元でのコントロールを誤り、トラップが大きく流れてしまう。この隙を逃さなかったのが、今夏レンヌから期限付き移籍で加入し、これが初先発となった21歳のモロッコ人FWヤッシル・ザビリだった。猛烈なスピードでチェイシングを仕掛けたザビリは、慌てるディトゥロの足元からボールを掠め取ると、無人のゴールへと冷静にインサイドで流し込み、ラシンに先制点をもたらした。

21分:ヤッシル・ザビリ(ラシン・サンタンデール 2 - 0 エルチェCF)先制からわずか6分後、ラシンの電撃的なパスワークがエルチェのハイラインを切り裂く。中盤の底でボールを奪取したグスタボ・プエルタから、新加入のイバン・マルティンへと素早くパスが渡る。イバン・マルティンは前線の動き出しを見逃さず、エルチェのセンターバック間のギャップを射抜く極上のスルーパスを供給。ディフェンスラインの裏へ完璧なタイミングで抜け出したザビリは、滑り込むDFを嘲笑うかのように、前に出てきたGKディトゥロの脇を抜く鋭いグラウンダーのシュートをゴール左隅へ流し込んだ。

36分:ヤッシル・ザビリ(ラシン・サンタンデール 3 - 0 エルチェCF)スタジアムがお祭り騒ぎと化す中、ザビリの記念碑的なハットトリックが完成する。中盤でのルーズボールに対し、焦りを見せるエルチェの右ウイングバック、ブバ・サンガレがヘディングでのクリアをミス。このこぼれ球を拾ったアンドレス・マルティンが左サイドのイニゴ・ビセンテへと展開する。ビセンテはペナルティエリア内を見渡すと、ファーサイドへ滞空時間の長い高精度のクロスを配給。マークを完全に外してフリーになっていたザビリは、落下点に入ると宙へと舞い上がり、アクロバティックな左足のジャンピングボレーを炸裂させた。Dituroが辛うじて触れたものの、ボールは無残にもネットに突き刺さり、前半だけで衝撃の3点差となった。

78分:ブバ・サンガレ(ラシン・サンタンデール 3 - 3 エルチェCF)防戦一方だったエルチェが、一瞬の隙を突いて1部リーグの意地を見せる。後半から途中出場し、右サイドでダイナミズムをもたらしていたルカス・セペダが起点となり、攻撃のテンポを上げる。エリア手前でクリアボールを拾ったブバ・サンガレは、迷わず右足を一閃。ペナルティエリア外から放たれた強烈なミドルシュートは、ブロックを試みたラシンのDFファク・ゴンサレスの体に当たって軌道が変わり、GKフレン・アヒルサバラの決死のセービングも届かずゴールへ吸い込まれた。

79分:フェル・ニーニョ(ラシン・サンタンデール 3 - 2 エルチェCF)1点を返し息を吹き返したエルチェは、得点直後のキックオフからわずか60秒後に追撃の弾丸を撃ち込む。中盤でのルーズボールを回収し、右サイドバックの位置に流れていたテテ・モレンテへパスが渡る。モレンテは対峙したラシンの左サイドバック、ホルヘ・サリナスをキレのあるフェイントで剥がし、ふわりとした正確なクロスを中央へ送る。これに合わせたのはエースのフェル・ニーニョ。ラシンDFの手前から驚異的なジャンプ力で頭一つ抜け出すと、首を鋭く振った完璧なヘディングシュートをゴール左隅へ突き刺し、エル・サルディネーロを一瞬にして静まり返らせた。


戦術・采配のポイント

ラシンのホセ・アルベルト・ロペス監督は、4-2-3-1のシステムを採用。前節まで先発だったアシエル・ビジャリブレをベンチに置き、運動量とラインブレイクに秀でるヤッシル・ザビリをワントップに抜擢した。この狙いがエルチェの「保持スタイル」に完璧に噛み合った。ラシンは、セルヒオ・カナレスとイニゴ・ビセンテ、そしてダブルボランチの一角に入ったイバン・マルティンが流動的にポジションを入れ替えながら、エルチェの組み立てに対して連動したハイプレスを敢行。エルチェの焦りを誘い、狙い通りの「高い位置での奪取からのショートカウンター」で前半のうちに試合を掌握した。

一方、エルチェのマルティン・アンセルミ監督は3-5-2(守備時5-3-2)の布陣で臨んだが、前半の戦いぶりは「自滅」という言葉が相応しかった。ボール保持への強いこだわりが裏目に出て、最終ラインからの不正確なビルドアップをラシンに狙われ続け、組織として完全に崩壊した。

しかし、後半にアンセルミ監督が見せた修正力は見事だった。ハーフタイムに沈黙していたアリ・ウアリとマルク・アグアドを下げ、エセ・ポンセとテテ・モレンテを投入。システムを2トップの3-4-1-2に変更し、さらにビルドアップの安定を図るためにセンターバックのビクトル・チュストを中盤のボランチへと一列上げる決断を下した。この変更が功を奏し、後半はポゼッション率でラシンを圧倒。さらに攻撃的なカードを次々と切り、後半15分過ぎからは完全に主導権を握り続けた。

対照的に、リードしていたラシンは交代策によってバランスを崩した。59分に右膝を痛めたアンドレス・マルティンに代えて新加入のマッテオ・プラティを投入。さらに69分にハットトリックの英雄ザビリと、配給役のビセンテを同時に下げてビジャリブレとギオルギ・グリアシュヴィリをピッチへ送った。しかし、この前線の一斉交代によって攻撃の起点とボールキープ力が著しく低下。防戦一方となり、エルチェのセペダやモレンテにサイドを完全に攻略される原因を作ってしまった。結果的にホセ・アルベルト監督は、終盤にセルヒオ・カナレスを下げてゲームを閉じるしか選択肢がなくなり、薄氷の勝利を強いられることとなった。


現地メディアの選手採点・評価比較

試合後、スペインの各現地メディアは劇的な展開となったこの一戦のパフォーマーたちに様々な評価を与えた。

特に注目を集めたのは、初先発でハットトリックの大偉業を達成したラシンのヤッシル・ザビリである。MARCA、AS、MundoDeportivoなど各紙ともに文句なしの最高採点を与え、MOMに選出した。ASは「18年ぶりにラシンのユニフォームでハットトリックを達成した神童」と、2008-09シーズンにチテが達成して以来の快挙を絶賛。特に3点目のアクロバティックなジャンピングボレーに対しては、MundoDeportivoが「エル・サルディネーロの歴史に残る、極めて美しく芸術的なティヘラ(シザーズボレー)」と最大級の表現で称えた。

対照的に、敗れたエルチェの守護神マティアス・ディトゥロに対しては極めて冷酷な評価が下された。SPORTやElDesmarqueは彼に対し最低点を与え、「プロフェッショナルにあるまじきアンソロジーな失態」と一斉に酷評。1失点目のイージーなトラップミスは擁護不可能と断罪された。一方でASは、後半にラシンの途中出場FWビジャリブレの決定的な一撃を右手一本で防いだシーンを挙げ、「後半のファインセーブで辛うじてこれ以上の惨劇を防いだものの、前半に見せた大失態を帳消しにすることは決してできない」と厳しく論じた。

ラシンの大ベテラン、セルヒオ・カナレスについても論調は分かれた。MARCAやRelevoは「やはり彼がボールを持つだけで、スタジアム全体の空気が変わる。攻撃のタクトを握る完璧なマエストロだった」と高い評価を与えた。しかし、SPORTはエルチェが後半にダブルピボットの圧力を強めて主導権を握った時間帯を指摘し、「エルチェのシステム変更に対応しきれず、中盤でセカンドボールを回収できなくなった後半は運動量の低下が顕著だった」と、守備面での対応の遅さに苦言を呈している。

エルチェの右ウイングバック、ブバ・サンガレに対する評価も非常に興味深い。SPORTは「前半はラシンのイニゴ・ビセンテとサリナスのスピードに完全に翻弄され、3失点目の場面でも目測を誤るなど守備は大惨事だった。しかし、後半に素晴らしいミドルシュートで1点をもぎ取り、右サイドを破壊し続けた推進力は、この暗闇に差し込んだ唯一の希望である」と、前半と後半で見せた極端なパフォーマンスの差を詳細に報じた。これに対し、守備戦術の厳しさを重視するMARCAは「1部リーグの強度を考えれば、前半の守備の脆さはあまりに致命的」と厳しく評価し、ASは「後半の彼のパワーと突破力は、エルチェの攻撃における最大の武器へと昇華していた」と、攻撃的なポテンシャルにスポットライトを当てるなど、メディアごとのサッカースタイルに対する視点の違いが色濃く現れた。


試合後の監督・選手コメント

ホセ・アルベルト(ラシン・サンタンデール監督)「我々はラシンだ。やはり、最後まで苦しむのが運命なのだろう。およそ75分間は完璧に試合をコントロールしていたし、4点目が入る雰囲気すらあった。しかし、1部リーグは一瞬の油断も許してはくれない。3-1にされた直後のプレーで、簡単に3-2にされてしまった。この終盤のバタバタ劇は、我々に素晴らしい教訓を遺してくれた。このリーグで勝ち点3を掴み取ることがどれほど困難で、どれほどの労力を必要とするか、身に染みて理解できた。だが、歴史的な1部復帰後の初勝利を挙げられたことは、これ以上なく喜ばしい」

「ザビリについては、本当に驚かされた。試合前のミーティングで、彼には『エルチェのキーパー(ディトゥロ)は足元でのビルドアップ時にかなりのリスクを冒してくるから、プレスをサボるな』と伝えていたんだ。それがまさに1点目の形で実を結んだ。彼がハットトリックを決めるとは誰も予想していなかっただろうが、この1週間のトレーニングでの素晴らしい取り組みを考えれば、この結果は十分に値するものだ」
「アンドレス・マルティンの負傷は、非常に心が痛む。当初は筋肉トラブルかと思ったが、どうやら膝を捻ってしまったようだ。初期の触診の印象としては非常に良くない。精密検査の結果を待たなければならないが、深刻な状態でないことを祈るばかりだ」

マルティン・アンセルミ(エルチェCF監督)「この結果を前にしては、どのような言葉も意味をなさない。言葉など不要だ。フットボールは90分間で競うものであり、前半の45分間を丸ごとドブに捨てるような戦い方をして、1部リーグで生き残れるわけがない。確かに、私の戦術的な配置転換や準備にいくつかのミスはあったかもしれない。それについては反省し、修正しなければならない。しかし、それ以前の問題として、前半の我がチームには戦う姿勢、すなわち競争の意識が完全に欠如していた。絶対に戦う姿勢を放棄してはならないのだ」

「ハーフタイムには、選手たちに戦術的な指示はほとんど出さなかった。『まずは一から戦う姿勢を取り戻そう。結果がどうなろうと構わないから、後半だけは誇りを持って戦い、後半のミニゲームで勝とう』とだけ伝えてピッチへ送り出した。後半見せたあの圧倒的なアグレッシブさ、競争力こそが我々の本来の姿だ。ただ、あの反撃が遅すぎたことは明らかであり、この結果に甘んじるわけにはいかない。我々はこの敗戦の痛みを忘れてはならない」
「後半のシステム変更について、テテ・モレンテは本職の右サイドバックではないし、ヘルマン・バレラも左サイドバックではない。しかし、当時のベンチを見渡したとき、それが我々に残された唯一の攻撃的なツールだった。現在の我々のスカッドは、いくつかの純粋なポジション(専門職)において、選択肢が極めて限定されている。移籍市場が閉まる9月1日の23:59までに、フロントがこの制限を解決してくれる補強を完了させてくれると確信している。今夜見せた後半の競争力を、次は90分間持続させなければならない」